藤野知明さん ©佐藤亘/文藝春秋

姉の葬儀で父が口にした言葉

――お姉さんは2021年に亡くなります。葬儀の時、お父さんは娘の論文が収められた小冊子を入れ、弟の藤野さんはお姉さんの趣味であったタロットカードと未使用のスクラッチくじを入れます。この対照が印象深いです。

藤野 姉の人生について、父は弔辞で「研究を手伝ってくれる親孝行な娘だった。ある意味で娘の一生は充実していたといえるのではないか」と参列者に向けて語りました。そう、信じたかったんだと思う。だから棺には論文が収められた冊子を入れなければならなかった。

 あの論文は、父に探すように言われて、私が見つけ出しました。父と母と姉の3人の名前が入った論文です。父は、本当はその続きも書きたかったようですけど、未完に終わりました。

注1)08年に投薬される非定型の向精神薬は当時、まだなかった。

注2)たとえば、入院中の患者が職員の暴行で死亡する宇都宮病院事件が発覚したのは84年のこと。

注3)インタビュー後編に、精神疾患に対する日本での戦前からの社会状況が語られる。

どうすればよかったか?

藤野 知明

文藝春秋

2026年1月29日 発売

次の記事に続く 統合失調症の娘を病院に連れて行かず、自宅に閉じ込めて…それでも精神科医が「ご両親の判断は正しかった」と断言した理由

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