登場したのは隙がない「春菊天そば」(700円)

 注文と同時に、女将さんが春菊天を揚げ始め、益子店主が生そばを取り出し茹で始めた。流れるような所作で注文をさばいている。生そばの茹で時間は3分ほど。しばし待って「春菊天そば」が登場した。

春菊天が大きい

 春菊天は大きく手のひら状に揚げられている。そばはやや細めのタイプ。まずつゆをひとくち。完成された味だ。鰹節、鯖節、昆布、しいたけなどから出汁をとっている。甘味は少なく、返しもしっかりと決まっている。隙がない。

 そばをすする。加水はやや低めで、かけでもしっかりとしたコシがある。春菊天はこれまたサクッとホロッとしていて軽いタイプ。三拍子そろったうまいそばに出合ってしまった。

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店主の益子さん

 益子店主が「もりそばで食べると、そばの良さがもっとハッキリわかりますよ」というので「もりそば」(580円)を追加注文した。

うまさに思わず納得する“理由”

 注文を待つ間にお店の誕生の経緯を聞いてみたのだが、この味のうまさが納得できる理由がいくつかあった。

  • 1)店主は建築会社の経営者で立ち食いそばが大好き

    「立喰い そばうどん えびす」の経営は、益子店主が経営する板橋が地元の建築関係の会社、株式会社EBISUである。近年、建築関係から立ち食いそば屋を経営開始するケースが増えており、そうした流れの1つというわけである。益子店主は大の立ち食いそば好きで、建設現場に出向く時は常に立ち食いそば屋をリサーチしているとか。つまり、店主の立ち食いそばデータベースは相当な量なわけだ。
  • 2)女将さんは料理のプロ、以前は沖縄料理屋を経営
     一方、女将さんは以前同じ場所で沖縄料理の店「がちまや食堂」を切り盛りしていた。つまり、天ぷらはもちろん、大抵の料理はお手のもの。メニューにある角煮は沖縄料理「ラフテー」の応用だ。まだお子さんが3歳と小さいため、昼間に営業できる飲食店にチェンジしようと益子店主と相談し、立ち食いそば店を始めたというわけである。
  • 3)女将さんの実家は町そば屋でノウハウを共有

     立ち食いそば好きの店主の好きが高じてというだけでなく、立ち食いそば屋を選択する大きな理由がもう1つあった。女将さんの実家が板橋区小豆沢にある町そば屋「満月」を営んでいるのだ。つまり、女将さんはそばの出汁、つゆ、そばの製麺などを日頃から見聞きしていた。実際に「父親のアドバイスを聞いて出汁つゆなどのノウハウを習得できたのは大きい」という。

 また、益子店主がこだわった国産そば粉使用の生そばは、「満月」の仕入先の製粉所にお願いしている。高級そば店などに卸している製粉所で、使用している立ち食いそば屋はほぼないとのこと。そして生そばは北海道産のそば粉を使用している。益子店主がこのそばを食べたとき、断トツにうまかったので即決したそうだ。