金正日の妹も消えた

 そして今、ひっそりと消息がわからなくなったロイヤルファミリーもいる。金正日の妹で、2013年末に処刑された張成沢元国防副委員長の妻だった金敬姫だ。

 金敬姫は20年1月、平壌で開かれた旧正月を祝う記念公演の際、6年ぶりに公の場に姿を現した。朝鮮中央通信は、正恩のそばで公演を鑑賞する金敬姫の姿をとらえた写真を公開したが、その肉声は伝えなかった。「金敬姫は今、金英柱や金聖愛と同様に、江界の特閣に幽閉されているのかもしれない」と鄭聖鶴は語る。

 同じように、金平一も1979年からハンガリーやブルガリア、ポーランドなどの北朝鮮大使館を衛星のようにたらいまわしにされたあげく、2019年末に北朝鮮に戻った。今、金平一やその家族らの消息もまったく伝えられていない。

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 元朝鮮労働党幹部は「ロイヤルファミリーの間の権力闘争は、できるだけ表面化させたくない。いざこざが明らかになれば、最高指導者の権威に傷がつく。だから幽閉などの手段を採る。殺害という極端な結果になった張成沢や金正男の件は、正恩の権力が固まり切らないうちに起きた悲劇だろう」と話す。

 こうした様々な工作は、市民が最高指導者とロイヤルファミリーを尊敬するように誘導するためのものだ。北朝鮮市民も表面的かもしれないが、金正恩の一家に対して熱狂的に手を振り、歓呼の声を上げている。韓国ソウル大学統一平和研究院が22年4月に発表した「金正恩執権10年 北韓住民統一意識調査」によれば、脱北者たちの「金正恩支持率(11~20年)」は11年が最低の56.2%だったが、18年に最高の73.4%になり、20年は62.5%だった。これは、当初は正恩に懐疑的な見方があったものの、北朝鮮当局の様々な情報工作により、一定の支持を得るに至っていることを示している。

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