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特集集まれ「インターネット老人会」

2018/08/17

「私って、生きづらさ系だよね」

 私は90年代から、摂食障害や性的虐待、自殺志願者、援助交際、家出の当事者がインターネット上で告白したり、相談に乗っていることを取材していた。自らもホームページを立ち上げて、援助交際や家出、いじめ、不登校、自殺志願者の声を集めていた。

 あるとき、摂食障害の女性を取材していた。その女性がどこかのタイミングで「私って、生きづらさ系だよね」と言った。当時、「生きづらさ」というキーワードでホームページや掲示板、チャットを開設する人は確認できなかったが、私には、とてもしっくりきたため、「生きづらさ系」をテーマにした掲示板やチャット、メーリングリストを作った。

 当時は、生きづらさや自傷行為、自殺に関連したことを発信している人たちを「メンタルヘルス系」とひとまとめにすることも多かった。「~系」という言葉が使われたのは「自殺系」や「出会い系」といったように、何らかの現象を中心にカテゴリを意味するのに使われていたように思う。一方、「自傷らー」というように、「~する人」というような意味で、「~らー」も使われるようになり、「メンヘラー」という造語も生まれた。

©iStock.com

 90年代後半は、一般ユーザーのネット・コミュニケーションが開花する。それまでは、制作ソフトやサービスを使わずに、HTMLなどの記号を使ってホームページ作りをしている人たちが多かった。そのため、簡単な日記サイトを作っている人はいた。しかし、活字を入力しさえすれば、日記となる「Web日記」サイトが立ち上がっていく。

ホームページ上で告白する人が増えていく

 こうした中で、掲示板やチャットに集まり、書き込みをしていた人を中心に、ホームページ上で、「生きづらさ」や「生きるための自傷行為」を告白する人が増えていく。

 2000年には、J-PHONE(現・ソフトバンク)のカメラ付き携帯電話J-SH04が発売される。この画期的な製品は画像添付できるメールサービスと結びつき、「写メール」と言われるようになった。

この後、カメラ付き携帯電話が爆発的に普及した

 自傷行為、Web日記、写メール。これらも相性がよく、自らの手首や腕を切り、血が流れる写真を撮影し、友人らにその写真を送ったり、Web日記にあげるといった人たちが増えてきた。見る側の中には「不快」と感じる人もいるため、自傷行為の画像を「禁止行為」の中に入れるプロバイダも出てきた。

 今では「生きづらさ」という言葉は説明不要になってきている。90年代後半から00年代前半は、ユーザーの中でも、出版界でも、「生きづらさ」という言葉は使われていなかった。そのため、記事にするたびに、編集者から説明を求められた。私の処女作『アノニマス ネットを匿名で漂う人々』は01年に出された。帯には「生きづらい」という言葉はあるが、書名には使用されなかったくらいだ。

 当時と比べれば、「生きづらさ」は日常の言葉になっている。そして、インターネットは「死にたい」というカミングアウトの場にもなっている。