昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2018/08/09

髪の毛ばかり注目されて選手もかわいそう

 それも一因なのだろう、特に指導者陣は、坊主禁止のことを質問されることに相当ナーバスになっていた。端場雅治監督も「坊主禁止」について触れると、途端に表情を強張らせた。

「坊主の話はもうよくないですか。髪の毛を伸ばして、そこばかり注目されて選手もかわいそうなんですよ」

 正直なところ、旭川大を甲子園で初めて取材した私には、どれほど「そこばかり注目されて」いたかはわからなかった。ただ、選手たちは坊主禁止のことについて、そこまで神経を尖らせてはいなかった。斎藤新太(2年)は穏やかな口調で、こう話してくれた。

「確かに、140キロを投げるピッチャーが3枚いることや、菅原(礼央)、持丸(泰輝)といったホームランを打てるバッターがいることや、平沢(永遠)さんという足の速いランナーをもっと取り上げて欲しかったというのはあります。でも、髪型のことばかり注目されたからといって、それが勝ち負けに影響したようなことはありませんでした」

「今度甲子園にくるときは、坊主にしてきます!」

 端場監督に今後の方針を尋ねると、苛立ちを露わにしてこう言った。

「今度甲子園にくるときは、坊主にしてきます!」

 混乱した。いったいどこが癇に障ったのだろう。

 一般的には、脱坊主は「普通」で、坊主は「特殊」だ。にもかかわらず、「普通」だと目立つので「特殊」に戻す、そう言っているように聞こえた。旭川大に関して、すべての報道を確認したわけではないので確かなことはわからないが、脱坊主にしただけで、それほどまでの取材禍に遭ったということなのだろうか。

大会初適用のタイブレークという熱戦の末、佐久長聖に敗れた ©共同通信社

 いずれにせよ、私も含めて取材する側も、取材される側も、高校野球の文化は、かくも独特なものなのだろうか。

“脱坊主”=自由ではない

 旭川大だけに限らず高校野球の指導者の中には、髪の毛を伸ばして負けると批判を浴びるという深層心理があるようだ。旭川大は、大会2日目の第四試合で、敗れはしたものの佐久長聖を相手に延長14回におよぶ大熱戦を繰り広げた。同試合は、甲子園初のタイブレーク導入試合でもあった。今大会、ここまで文句なしのベストゲームだ。このような試合を観て、髪を伸ばしているから……などと言う大人がいるのだろうか。いたとして、相手にする必要があるのだろうか。

 混乱は深まる。 

 ただ、旭川大を取材し、一つ、肝に銘ずべきだと思った。それは「脱坊主=自由」と決め付けてかかることは、何の根拠もなく「高校野球は坊主であるべき」と信じ込んでいる人たちと、固定観念に縛られ盲目になっているという意味において大差はないということだ。

この記事の写真(2枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー