作家・山崎豊子の不朽の名作『大地の子』(文春文庫)が、初めて舞台化される(2/26~3/17、東京・明治座)。中国残留日本人孤児という過酷な運命を背負った主人公・陸一心(松本勝男)。その妹であり、物語の悲劇を象徴する存在でもある張玉花(あつ子)を演じるのが、俳優の奈緒さんだ。壮大な原作の舞台化という大きな挑戦、そして絶大な信頼を寄せる演出家・栗山民也氏との再タッグ。この作品に、奈緒さんはどのような気持ちで臨むのか、語ってもらった。
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どれだけ大きな作品になるか想像がつかなかった
――出演オファーが来た時はどんな感想を持ちましたか?
奈緒 まず『大地の子』を舞台にするということに驚いて、どれだけ大きな作品になってしまうのだろうかと、想像がつきませんでした。壮大な原作のどの部分をエッセンスとして描くのか、どれぐらいの上演時間になるんだろうとか、色々な想像をしました。
自分にできるのだろうかという思いもありましたが、一方で、演出が栗山さんであるということが、どんな想像も不安も期待にかわって、その期待が大きく膨らんでいきました。
――出演を決められた大きな理由は、栗山さんの存在があった?
奈緒 そうですね。以前ご一緒した『恭しき娼婦』(2022年)という舞台が終わった時から、私は栗山さんに「もう一度ご一緒したいです」というお話をしていて。だから、『大地の子』のお話を頂いた時に、「絶対にやりたい」という思いが湧き上がってきたんです。
役者として「不安」を抱えていた時に
奈緒 栗山さんは演出家としてはもちろんですけど、1人の人間としてすごく尊敬しています。稽古場で発せられる一言一言が、役者としても大事なことですが、人間として大切にしなければいけないことだと感じることがすごく多かったんです。栗山さんと出会う前の自分と出会った後の自分は、本当に違う人間だと感じるぐらい、勇気と覚悟を持てた出会いでした。
――何か具体的に心に留めてらっしゃる言葉はありますか?
奈緒 「本気で迷っていいんだ、本気で悩んでいいんだ」、「お客さんはその役者が初めて出す声を聞いて、本当に悩んでいる姿を見て、帰る時に幸せな気持ちで劇場を後にできる」とおっしゃっていたのが、私の中ではすごく救われる言葉でした。
その時の自分は、役者として「不安」を抱えていて、すごく「安心」を求めていたんです。けれど、栗山さんの言葉を聞いて、「この不安はずっと持っていてもいいんだ」と思いました。もちろん今でも、迷ったり不安を感じることはあるんですけど、不安を恐れることはなくなったので、すごく健やかにこのお仕事と向き合えているなと思います。

