ルイス・クー主演『私立探偵』(第21回大阪アジアン映画祭などで上映)が話題のジョナサン・リー監督は、数多の香港映画の名監督たちに師事し、その現場を踏んできた。
数々のエピソードを明かしつつ、こう言う。「今こそ香港映画の最も面白い時期ではないかと感じている」――。(全2回の2回目/前編を読む)
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大ヒット作『九龍城砦』の監督を譲った経緯
実は最初、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(24年)の監督は僕がやる予定だった。僕は原作に描かれた友情と義理、多彩なキャラクターと物語構成に魅了され、脚本を何稿も書いたが、なかなか映像化まで実現できなかった。僕は漫画に忠実で、その世界観からなかなか離れられなかったのかもしれない。漫画をどう現実と結びつけて映像表現していくか、あまり考えなかった。
ある日、ソイ・チェンが僕に「監督を自分に任せるのはどうか」と聞いてきた。僕は「この作品は彼にしか撮れない」と思えたので、すぐ監督を彼に譲った。彼が僕の代わりに大好きな原作を監督してくれたことには、今でも深く感謝している。もし僕が撮っていたら、今ほど面白くならなかったし、ここまで成功もしなかっただろう。
私立探偵を通じて夫婦関係を描く
『狂獣 欲望の海域』の後、自分には脚本面の弱さがあると実感したので、新しくて良い脚本家と組みたいと思った。知り合いの紹介で、ちょうど『風林火山』(25年)の脚本を書き終えたチョウ・マンユーと知り合った。そのとき、彼から『私立探偵』(25年)の企画を提案された。実は18歳のとき、僕は探偵をやっていたことがある。この題材にとても興味を持った。
現在の私立探偵がどんな仕事をしているのかリサーチすることになり、不倫や商業犯罪を調べることが多いと分かった。リサーチしている間に、昔は女性が男性を調べることが多かったが、今は男性が女性を調べるケースが増えていることにも気付いた。この方向で脚本を書き進めた。書いているうちに、私立探偵が自分の妻を調査するという面白いアイデアを思い付いた。いろいろと考えた末、探偵映画の形を取りながらラブストーリーを作り、私立探偵を通じて夫婦関係を描こうと決めた。
チョウと脚本を開発している間に、突然、投資家がいくつかの企画を持ち込んできた。その中の一つで、借金を返済するために銀行を襲うという実話を元にした『第八の容疑者』(23年)が、僕らにとって最も興味を引かれた企画だった。僕が最も関心を持ったのは、強盗犯の兄弟が20年間どのように世間から隠れ、別の身分で生活してきたのかという点だった。そして、その兄弟の逮捕に取り憑かれた警察。2人の長年の執着が強い対立を生み、最後には兄が弟さえ殺してしまう。その人間性をどう描くか考えるだけでもワクワクした。

