米軍にひけをとらぬ英軍空挺部隊

 さて、英軍空挺部隊も米軍にひけをとらぬ精鋭部隊、前の大戦からその名を馳せ、フォークランド、アフガンなど実戦経験も豊富である。

 

 そのなかでも最精鋭と言われるSAS(Special Air Service=特殊空挺部隊)は世界各国軍の特殊部隊の手本とされ、駐英イラン大使館人質事件はじめ、英国が関わったほとんどの軍事作戦で実績を上げている。

 それどころか、4年前に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻ではゼレンスキー大統領の軍事顧問団となり、身辺警護のみならず、首都キーウに20キロまで迫っていたロシア軍を撃退させる作戦を提案するなど、物心ともに支援していたと非公式ながら報じられているくらいである。

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 米英軍はアメリカ同時多発テロの直後、アフガニスタン侵攻でもイラク戦争でも、内陸奥地に空挺部隊を送り込んでいる。実戦に裏打ちされたノウハウを本訓練で得られれば、第1空挺団にとっても貴重な経験となるのは間違いない。

救急車まで駆けつける事態に

 ここ東北は地表ですら凍える寒さ。約300メートル上空はさらに寒いはずである。

 さらに速度も輸送機は失速寸前まで落しているとはいえ約240キロと新幹線並み。強烈な風に身を流されるのである。

 そのせいか、この日のジャンプは着地が荒れた。林の中に降下し、木の枝にひっかかり、着地が困難な隊員たち。さらに予備落下傘を使用する隊員までいた。

 

 結果としてけが人が続出することになり、自衛隊のアンビ(救急車)だけでは足らず、一般の救急車まで駆けつけるほどだった。空挺降下とはそれほど危険を伴う訓練なのである。これが有事となると、その危険度は段違いである。

 沖縄県尖閣諸島にせよ島根県竹島にせよ、降下地点は極めて限られる。誤って海に降下する者もいよう。敵支配下となれば地上から攻撃されることも想定できる。

 上空から落下傘を背負い、動きを制限されながら、地上で待ち伏せる敵に反撃しなければならないという事態も考えられる。そんな環境下に飛び出していく自信は、まさに命がけの訓練を通じてしか得られないのである。

 

 実戦下、しかも夜間降下ともなると、林の中はまだましである。降下地点を見誤り、敵の頭上や湖面や海面に落ちれば、生死にかかわる。

 だからこそ、想定される実戦の状況下より、さらに不利な環境下を想定し、精神的、肉体的負荷まで課せられる訓練を日常から続けなければならないのである。人の命に関わる任務に就く者は、自らの命にも関わるほどの訓練を続けなければならないはず。