当時、青森県住宅供給公社で経理を担当していた千田郁司氏が14億円超を横領し、その多くをチリ人の妻であるアニータ・アルバラードに送金した「アニータ事件」。総額は少なくとも8億円とされ、千田氏の供述では約11億円とされる。
千田氏はチリでアニータと結婚式も挙げている。式のようすや、今でも夢に見るという後悔している瞬間について、朝日新聞の坂本泰紀記者が、千田氏の証言を基にまとめた書籍『アニータの夫』(柏書房)からお届けする。(全5回の3回目/続きを読む)
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結婚式が終わり、日本に帰国して後悔に襲われた
用意されていた貸衣装の黒いスーツを着て、教会で指輪を交換した。アニータは薄いピンクのドレス姿。金のわっかみたいな指輪も向こうが用意していたものだったけど、サイズが大きくてガボガボだった。
牧師から「ベソ・プレファボーレ」って言われたけど、ベソがキスのことだって、わからなくてね。「ゲソ? イカのゲソ?」と思っていたら、アニータは「なにやってんのよ」って俺のほっぺを持って、無理やりキスしたわけ。
みんな大笑いですよ。教会から出てマーケット回って、チョコレートを子どもたちに配った。
結婚式の夜は、親戚から両親からぜんぶ集まった。アニータの家族はプロテスタントで、実家で酒を飲めないから、アニータがバーを朝まで借り切った。朝の6時まで夜通し。テキーラから何から飲まされて、どうやって帰ったのかまるっきりわからない。
結婚の喜びもなにも、なにがなんだかわからない感じだった。言葉もわからないし、なんの騒ぎだ、みたいな。でも、日本に戻った時は後悔しました。結婚となると違うから。
