当時、青森県住宅供給公社で経理を担当していた千田郁司氏が14億円超を横領し、その多くをチリ人の妻であるアニータ・アルバラードに送金した「アニータ事件」。なぜ、一介の経理担当者だった千田氏は、これほどまでの大金を動かすことができたのか。そして、アニータ事件とは何だったのか。
朝日新聞の坂本泰紀記者が、千田氏の証言を基にまとめた書籍『アニータの夫』(柏書房)から、アニータと出会ったその日のエピソードを抜粋してお届けする。(全5回の1回目/続きを読む)
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出会ったのは「小汚いスナック」だった
その夜は公社の歓送迎会だったけど、途中で会場を抜け出しました。
公社は青森県庁から天下ってくる人間が多くて、県の係長クラスがぼこっときて課長になるけど、俺みたいなプロパーは頑張っても係長止まり。普段は「天下りの廃止求めようぜ」なんて、くさしているプロパーの連中が、飲み会では、天下ってきた連中の献杯に行く。
俺は自分のお膳の前で、ちびちび飲んでいたけど、そういう寒い光景を見るのが嫌になって、会場を出たんです。
ふと見上げると、「エンゼル」というスナックの看板が目に入った。
「さて、天使にでも会いに行くかな」って階段を上がっていった。青森の繁華街にある一流の店じゃなくて、小汚い感じのスナックだったけど、じゃあ一杯飲んでいこうかなって、パッて入った。
いま振り返ると、それが運の尽きだった。人生変わってしまうんだから、おそろしいもんです。
