当時、青森県住宅供給公社で経理を担当していた千田郁司氏が14億円超を横領し、その多くをチリ人の妻であるアニータ・アルバラードに送金した「アニータ事件」。総額は少なくとも8億円とされ、千田氏の供述では約11億円とされる。
なぜ、一介の経理担当者だった千田氏は、これほどまでの大金を動かすことができたのか。アニータにお金を渡した最初のきっかけについて 朝日新聞の坂本泰紀記者が、千田氏の証言を基にまとめた書籍『アニータの夫』(柏書房)からお届けする。(全5回の2回目/続きを読む)
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「パスポート取ってこい」最初に渡した金額は、300万円だった
離婚して、子ども2人と離ればなれになった。自宅の2階はがらんがらん。自転車の前と後ろに子どもを乗せて幼稚園の送り迎えをしていたけど、それもなくなった。そんな時にアニータと出会った。
彼女と付き合うようになって、俺の自宅で手料理をふるまってくれたこともあった。パスタをつくったんだけど、牛肉の塊を買ってきて、細かくたたくわけですよ。友だちの家族を呼んだんだけど、みんな「おいしい」って。
俺が「後片付けしようか」って聞いたら、「後片付けも含めて料理だからわたしがやる」と。料理をつくってくれたのは、その1回だけでしたけどね。
一緒に旅行にも行きました。青森の黒石にある温湯(ぬるゆ)温泉とか、岐阜の飛驒高山とか。札幌にも時計台を見に行った。飛驒高山には名古屋から行ったから、その時に彼女から「名古屋で働いていた」とか教えてもらってね。
21歳くらいで日本に来て、はじめに名古屋にいて、六本木にもいて、青森にわたってきたと。ある日、やっぱり子どものそばには親がいてほしいという思いもあって、「国に帰りなよ」って言ったんだよね。
そうしたら「パスポート取られているから帰れない。ここに来る時に200万円借りた」って言うから、「パスポート取ってこい」って300万円渡した。それが公社から横領した金をアニータに渡した最初だよね。
