猛練習の中、見失ってしまった「音楽をする理由」

――その後、13歳のときにイギリスの名門音楽学校に入学されました。やっぱり音楽の勉強を続けたいという想いが強かったんですね。

三浦 ピアノをもっと弾きたいというよりも、このままドバイにいて人生を終えたくないと思ったことが大きかったです。奨学金をもらって入学した音楽学校は、9歳から18歳までの子たちが一緒に暮らす全寮制。みんな家族のように親密だったし、誰がどんな演奏をするのかわかるような環境でした。

 そこで15歳くらいのときに「自分、下手じゃん」って気づいてしまって。「本当にピアニストになりたいなら頑張らないといけない」と思って、卒業するまで朝5時に起きて猛練習するようになりました。

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 でも、練習する中で、「どうして自分は音楽をしているんだろう?」という疑問が湧いてくるようになったんです。「音楽ってあなたにとってどんな意味がありますか?」という問に、どう答えたらいいんだろうって。

「音楽は私の人生のすべてです」なんて答えは、何も言っていないに等しいんじゃないか。たまたま家にピアノがあったからピアノを始めて、良い先生に習ったり良い学校に入ったりすれば、コンクールでいくつか賞は取れるだろうし、そんな理由でプロのピアニストになるのは、ただ「自分ができちゃうからやっている」だけのような気がして、嫌だったんです。

 でも本当の芸術ってそうじゃないはず。僕たちは作曲家の生き方や思いの詰まった作品を演奏するわけだから、そんな生半可な気持ちじゃ音楽に対して失礼です。だから自分が音楽をするはっきりとした理由を見つけないといけない。一方で、じゃあピアノをやめて何ができるかといったら何もない。だから自分の中で逃げ道をつくるというか、賭けてみようとしたんです。

 ロンドンの王立音楽アカデミー、ベルリン芸術大学、アメリカのカーティス音楽院(※3校とも世界でトップクラスの音楽学校)を同時に受験したんです。3校すべて合格するなんて、ありえないと自分でも思っていました。もし合格したら結局自分はピアノが上手いということだから、それならピアノを続けてもいいんじゃないかって。

 結果的に合格してしまって、「もう、やるしかないな」と思いました。音楽の仕事が比較的多くて、自活しやすそうな街にあるという理由でベルリン芸術大学を選びました。

――音楽をする理由は見つかりましたか?

©山元茂樹/文藝春秋

三浦 見つかりませんでした。1年在籍しましたが、自活するためにバイトが忙しくて大学にはほとんど行かなかったし、苦しいままでした。だからいつかピアノを再開するために一旦やめようと思ったんです。どうして音楽をするのか答えを見つけるまで戻らないって。

――それでもまだピアニストになる夢は揺らがなかったんですね。

三浦 最後は絶対に自分はピアニストになるって思っていたんです。今、どんなに目標と遠いところにいても、決めたんだからそうなるって信じていました。だから確信をもって戻ってこられる自信があったんですよね。

 何事も「できる」って信じている方が、自分も頑張れて、周りも応援してくれるし、「できない」って思っているよりは効率的だと思っています。