連中が最も怖がってるのは「スイカ切り」

――台湾の黒幇は園区の仕事に関係していますか?

コーラ 部分的にな。というのも、黒幇は詐欺集団そのものとは違うわけなんだよ。

ミャンマー東部のシュエコッコにある中国系都市「亜太城」。中国政府の一帯一路政策で建設されたが、詐欺とマネロンの温床の暗黒都市に。トップだった人物はタイで投獄されている。2025年2月28日、筆者撮影。

――どういうことです?

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コーラ 詐欺グループの多くは、本来は裏社会の住人じゃない。実はビジネスマンや一般の若者だ。だから、連中が最も怖がってるのが「黒吃黒(ヘイチーヘイ)」、つまり他の犯罪者からカネを奪われることだ。俺たち(=黒幇)の側では「スイカ切り」って呼んでるやつだな。がっつり稼いでる詐欺グループを見つけてきて、脅してカネを奪う。自分で詐欺をやるよりラクなわけだ。

 詐欺グループとしては、保護が必要になる。だから、黒幇と条件を話し合って提携(=みかじめ料を払って組織を防衛)する。詐欺師と黒幇は本来は別のもんだが、こうして関係ができるわけだ。

――私が過去に取材した感じだと、ミャンマーよりもカンボジアの園区のほうが台湾系の影が目立つ気がしました。

コーラ 理由はいろいろあるけどな。たとえば竹聯幇だと、組織の創設者である陳啓禮(チェンチィリィ)さん(※)がカンボジアに長く滞在していた。そりゃあ、いろんな人が現地にいろいろと友達がいるわな。いっぽうミャンマーについては、竹聯幇は組織的には関与してないが、白狼(バイラン)さん(※)はあっちの園区にずいぶん顔が効くみたいだな。

※注:陳啓禮(1943~2007):竹聯幇を創設した大親分。国民党独裁時代の1984年に中華民国情報部と協力し、サンフランシスコで作家の江南(ジャンナン)を暗殺。事件後、台湾での投獄と恩赦を経て1996年にカンボジアのプノンペンに移住、シハヌーク国王と昵懇の関係を築いた。ゆえに竹聯幇は当時からカンボジアの闇社会に地盤がある。

※注:白狼(1948~):本名、張安楽。竹聯幇の現役主要幹部にして長老。宮崎学が執筆した伝記『白狼伝』で日本でも有名な伝説のインテリ中華マフィア。外省人で中国共産党との関係が深く、人民共和国主導の中台統一を訴える中華統一促進党の党首としても有名。

次の記事に続く 「天職を見つけた、ここにいさせて」救出した日本人の1人が帰国を拒否…元中華マフィアの男が語る“詐欺組織に取り込まれる人々”の救えなさ