映画やマンガなどの創作物ではおなじみの悪役・中華マフィア(中国語で黒幇)。だが、その実態は日本社会で知られているとは言い難い。そもそも黒幇のメンバーは、日本の暴力団(ヤクザ)とは違って一目でわからない人も多い。友達の友達が黒幇、街角でたまたま食べた食堂のバックには……、みたいなことも普通にある。中華圏のオモテ社会とウラ社会の距離は、日本と比べて明らかに近いのだ。
そして、これは台湾も同様だ。たとえば2007年に死去した台湾最大の黒幇・竹聯幇(ちくれんほう)の創設者の陳啓禮の葬儀は、なんと当時の国会議長の王金平が名誉委員長をつとめた。また、いまも現役の国会議員である国民党の羅明才の父親は天道盟という広域マフィア組織の創設者(しかも元国会議員)である。
日本人からはクリーンなイメージを持たれている与党の民進党にも「親父が元、極道」という議員は普通にいる。もちろん、台湾でも締め付けは進んでおり、近年の黒幇の活動はかなり低調なのだが、日本と比べるとアウトローが身近な社会なのは間違いない。(全3回の1回目/つづきを読む)
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マフィアから手品師に転身した男
そこで取材に応じてくれたのが、通称「コーラ兄貴」(可樂哥)こと王元兆だ。かつては竹聯幇の構成員で、恐喝や発砲などで服役3回、合計10年にわたり投獄された経歴を持つ。現在の竹聯幇との関係も、「集会に行くけど活動には加わっていない」(本人談)というもので、日本人の価値観を当てはめると「広域暴力団の密接交際者」の元組員に相当する。
とはいえ、現在のコーラ兄貴は足を洗い、手品師として活躍中。現地の認識でも「更生した人」として受け止められており、普通にメディアに出て黒幇や竹聯幇の実態を積極的に明らかにしている。一介の台湾の市民として、福祉施設などでの慰問活動も積極的におこなっている。
以下のインタビューは、今年1月以来、わたしが台湾で彼と数回会って聞いた話を再構成したものである。では、ご覧いただきたい。

