日本でも被害が深刻な東南アジアの園区(詐欺拠点)発の特殊詐欺は、報道ベースでは「中国系」マフィアの関与が囁かれることが多い。だが、実は台湾系の「悪い人」が関与するケースもかなり多くある。
たとえば昨年5月にカンボジアのポイペトの園区で、日本人の詐欺従事者29人が現地当局に拘束される事件が起きたが、この園区の経営者は台湾の高雄から来たマフィアだったとされている。なにより同じ中国語を使う国なので、台湾には日本よりはるかに多くの園区の情報が入ってくる。
というわけで、台湾の黒幇(マフィア)界隈に通じた人に、引き続き事情を聞いてみることにした。すなわちコーラ兄貴(可樂哥)こと王元兆。台湾最大の黒幇・竹聯幇の元構成員で、現在はカタギの手品師になっている男である。(全3回の2回目/つづきを読む)
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最初は“ベンツ当選詐欺”から始まった
――ミャンマーやカンボジアの園区の事情は、いつから知りました?
コーラ兄貴(以下、コーラ) 数年前からだなあ。っていうのも、俺はすでに悪事や組織からは離れてるわけだが、昔の馴染みには裏稼業を続けてるヤツも多いんだ。あいつらがミャンマーやカンボジアから戻ってくると、ずいぶんイケてる服を着ていい時計をはめてる。「景気よさそうじゃねえか」とか聞くと、勝手にドヤ顔で自慢するわけだよ。園区で儲けたぜ、って。
――そもそも、電話を使った特殊詐欺は、実は台湾のアウトローが発明したものですよね。ここ台中に拠点を置く黒幇がはじめたと聞きますが……。
コーラ その通りだ。実は発祥は台湾で、十数年前に始まったんだ。当初は「懸賞でベンツが当たりました」みたいな電話詐欺だったな。で、当選通知を送り、実際にベンツっぽい鍵を渡して信用させる。ターゲットが喜んで話を進めだすと、「ベンツはタダだけど、車両の価値の15%の贈与税が必要です」と言われるわけだ。
ここでカネを払うと、今度は「弁護士の公証費用が8万元必要で……」みたいなノリでむしり取られていく。これが最初期の手法だ。その後、これは儲かるってことで参入者が増えて、投資詐欺とかロマンス詐欺、仮想通貨を使った詐欺なんかに変わり、被害額も爆増した。
