監督に出会う前、俳優を辞めようと思っていた
——ヨアキム・トリアー監督と『オスロ、8月31日』(11)、カンヌで女優賞を獲った『わたしは最悪。』(21)、そして本作と組んだことで、レナーテさん自身には何か変化がありましたか?
レナーテ 私は演劇出身で、役作りの仕方、脚本を分析的に読み解く方法、そして心身を鍛え上げる方法は舞台で学びました。でも、ヨアキム・トリアーはずっと新しいやり方について話してくれるんです。それはどれだけ自分を解放し、ありのままの自分と役柄が経験することにオープンでいられるか、ということ。今、俳優としての私を定義づけているのはまさにこれだと思いますし、毎回進化し続けています。だから、彼と仕事をするたびに、より深く掘り下げ、より勇敢に仕事に取り組むことができる。私が出ていない作品でも、ヨアキムの映画を観ると人間の存在について何か新しいことを学べます。さらに彼は本当に知的で、洞察力に富んでいるので、会話自体が素晴らしいんですよ。
——レナーテさんは『わたしは最悪。』に出る前、演じることに疑問を感じていたそうですね?
レナーテ 実は、自分の中では演技の仕事を辞めようと決めていました。もう他の仕事をしようってね。長年演劇を続けてきたけれど、正直ノルウェーには優秀な演出家があまりいないし、似たような役ばかりで満足できず、これ以上続けても良い役をもらえそうになかった。そのループにはまり込んでしまっていたんです。私はもっと違う演技が出来るんだ、と思ってもそれを見せる機会がない。でも、私が辞めると決めた2日後、突然ヨアキムから電話があり、「君に演じてほしい役があるんだ。もう脚本もある」と言われたんです。まるで宝くじに当たったようでした。そしてご覧の通り、今は自分のやりたいように仕事が出来ています。本当にラッキーで、もう辞めたいとは思いません(笑)。
