「絶望で折れた」木原龍一に三浦璃来がとった“意外な行動”

「ショートが終わった後は絶望的な感じで、点数差も絶望しか残っていなかったので、僕自身の心というのはすごく折れてしまっていたんですけど」

 あの夜は絶望で睡眠不足に陥ったという。この言葉を聞いていると、逆転の目はないように思える。

 自分の傍に、これだけ「ダウナー」な人がいたとしたら、どんな言葉をかければいいのだろう? 正直、分からない。

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 三浦はどうしたのか? 優勝後の会見で、その時の自分の感情のことはあまり語らず、相棒の姿をこう描写した。

「龍一くんが、演技が終わったあとに大泣きする場面というのは、1年に1回のイベントなので、まったく珍しいものではなかったですが、フリーの当日練習から、ぽろぽろぽろぽろ泣いていて」

「ぽろ」が4回。だいぶ多い。どうやら励ますのではなく、木原が「戻ってくる」のを静かに待つスタイルのようだ。それは7年間、一緒に組んできての「知恵」なのだろう。

 では、どうやって木原は戻ってきたのか? 

 昼寝だった。

「フリーの公式練習のあとに1時間ほどしっかり寝たら、逆に気持ちもリフレッシュできて。そこから、『もう強い自分に戻ったから』と璃来ちゃんに宣言しました」

(左から)三浦璃来、木原龍一 ©時事通信社

 木原が強烈なキャラを見せる一方で、三浦の印象的なシーンは、フリーの演技が終わってから「暫定王者席」で他の選手たちの演技を見守り、その結果、金メダル獲得が決まったあとの「スポーツマンシップ」を見せた場面である。

 フリーの最終滑走はドイツペア。このボロディン・ハーゼ組の得点が発表されると、三浦は喜んでいいものかどうか、しばし戸惑っていたように見えた。

 銅メダルを手にしたとはいえ、近くには失意のドイツペアがいた(『M-1グランプリ』のような暫定王者席はスポーツでは残酷だと思う)。

 三浦が見せた感情は遠慮であり、情であり、気づかいだった。

 三浦の「日本人的な美徳」が見えた瞬間だったが、一方の木原がショートプログラムの時とはうって変わって、「ハグ・モード」になっていたのも、なんだか微笑ましかった。