「精神的に折れかけた男性を見守る」りくりゅうの物語

 ペアに挑む2人組の歴史には必ずと言っていいほど、挫折、出会い、対立と和解、そして愛情といった、ありとあらゆる感情がぶちこまれるので物語が豊潤なのだ。

 今まで、日本からは競争力のあるペアが出現せず、物語の畑が耕されていなかった。

 そこに、りくりゅうが登場した。ふたりが提示した物語は、

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「9歳年下の女性が、オリンピックという大舞台で精神的に折れかけた男性を見守る」

 という、日本のスポーツ界では極めて稀な関係性が見られるものだった。

 昨今、IOCの主導によって男女混合種目が増えているが、フィギュアスケートペアという種目の特性があるにせよ、ここまで明確なキャラと物語が見えてくる男女のコンビは稀有である。

木原龍一、三浦璃来 ©JMPA

 実は、このストーリーラインの構造は、アメリカの傑作野球映画の設定に似ているのだ。

 代表的なのは、ケビン・コスナーの『フィールド・オブ・ドリームス』、ロバート・レッドフォードの『ナチュラル』だが、これらの物語には男性が挫折に直面すると、それを静かに見守る「聖母」的な女性が登場する(前者はエイミー・マディガン、後者はグレン・クローズ)。そして見守ることで男性の復活を支え、物語が完結するーー。

 りくりゅうの物語は、ふたりのキャラクターが際立ったうえで、オリンピックという最高の舞台において、想像できなかったショートでの失敗、フリーでの完璧な演技という美しい流れでフィナーレを迎えた。

 文句なし。ただ、ファンはこれから、りくりゅうに過剰な物語の期待をかけそうな気がして……それが心配だったりするのである。

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