戦争に挑むのは「勝てる」目算が立ったとき

 孫子が言っているように、戦争というのは、国の運命を左右する一大事。だから、これは慎重に行わなくてはならない。当たり前のことですが「なんとなく戦争しちゃう」なんてことは100%あり得ないわけですね。

 なんとなく戦争があって、なんとなくダラダラ続いて、どっちが勝ったかどっちが負けたか分からないまま終わった、という戦争論は、僕は初手から間違いだと思います。

 よほどの愚かな戦国大名であれば「なんとなく」戦争を始めてしまうことがあるかもしれないけれど、そんな者はすぐに滅ぼされてしまいます。

ADVERTISEMENT

 あるいは、殿様の周囲にはいろいろな補佐役がいるのですから、まず諫めることでしょう。戦争をしたらどれだけマイナスがあるか。それを絶えず考えて、それでも「勝てる」「儲かる」という目算が立って初めて戦争に挑むのです。

 戦前の大日本帝国軍がよく強調していたことの1つに、先ほどもお話しした「一の軍隊が十の軍隊を打ち破るにはどうしたらいいか」という話があります。けれども、リアルな戦争を考えるとき、そうした物語性は不要です。

写真はイメージ ©beauty_box/イメージマート

勝つための基本中の基本「敵の3倍の兵隊を編制せよ」 

 どうやったら相手を倒せるかというとき、普通言われるのは「敵の3倍の兵隊を編制せよ」ということです。一説によると6倍という数字もありますが、まずは敵の3倍の数の軍隊を編制すること、それが必要になる。

 間違っても「柔よく剛を制す」ではなく、「大は小を兼ねる」。これが大原則です。相手よりもたくさんの兵で相手を圧倒することが常道です。これは司馬遼太郎さんも言っていることです。

 歴史研究をちょっとかじった人は、すぐに司馬遼太郎さんを指して「司馬史観」と言ったり、「史実と違う物語にしている」と言いたがったりする。そこに僕は歴史研究をやる人の底の浅さを感じてしょうがないんです。

 あれだけの業績を残された方をなぜそう簡単に軽んじることができるのか不思議でなりません。史実を知ったうえでの構想力として、歴史の魅力を存分に広められた偉大な小説家だと僕は思います。

 話を戻して、司馬遼太郎さんが挙げた数字は、だいたい40万石の領地を持つ大名なら1万人という兵力を持つことができるというものです。ざっくり言って、「100石当たり2.5人」と言われますから四捨五入して「おおよそ3人」ともいう。

 40万石で1万人というのはザックリした数字ですが、どんなに概算であれ、数字を基準に兵力算定することが重要なのです。戦争に勝つためには、まずしっかりした人数を整えなければダメだという、当たり前のことが大前提なのです。多くの兵隊がいれば戦争に勝てる。それが基本中の基本になります。

次の記事に続く 《『豊臣兄弟』の時代》「根こそぎ殺してしまえ!」実は刀で斬り合って死ぬ人は少ない…戦国時代の戦場で“最も多い死因”とは?

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。