豊臣秀吉と弟・秀長が戦国の乱世を切り拓いていく姿を描いた大河ドラマ『豊臣兄弟!』。戦国時代といえば、全国の大名が領土拡大や天下統一を目指して戦いを繰り広げた時代だが、実際の戦場はどのようなものだったのだろうか――。

 ここでは、歴史学者・本郷和人氏が戦国時代の「戦場のリアル」を解説した『軍事の日本史[新装版] お金・戦略・武力のリアル』(朝日新書)より、一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

写真はイメージ ©beauty_box/イメージマート

◆◆◆

ADVERTISEMENT

戦いたくない農民たちをどうやって戦わせるか

 信長に限らず、戦国大名の力は強烈です。

 戦国大名本人と主従の関係を結んでいるわけではない農民たちまでをも無理やり戦場に引っ張り出してくる。だからこそ、何万人という規模の部隊の編制があり得たのです。

 時代が下って戊辰戦争のときの軍勢を見ると、薩摩軍、長州軍合わせても約2、3000。あれれ? また桁が変わってます。なんで減ったのかと思ったら、結局これは、武士だけを集めているからです。農民は基本的に排除しています。

 長州軍の場合は、奇兵隊とかありますから、この限りではないでしょうけれど、やはり、プロ的な存在として戦闘を行う人々に限れば、2000、3000というのがいいところで、それに農民を大量に動員してくると何万人という軍勢になるわけです。

 実際、戦いに勝つにはどうすればいいのか? というと一番はたくさんの兵隊を集めること、2番目には優秀な武器を装備すること、そして3番目に大義名分というのを僕は挙げて考えるようにしています。なかでも、大義名分は非常に重要になりますから、これは第7章でくわしくお話しします。

 要するに、農民は戦いのプロじゃないから、戦いたくない。誰だってそうですけれど、命は惜しいわけですね。この命が惜しい人々をどうやって戦わせるか。それがここでも大きな問題になる。

 戦いのプロだけの集団ならば、戦うのが仕事ですから、ためらう暇もなく戦います。いわば、自分の存在意義、レゾンデートルにかけて戦います。だけど普段は畑仕事をやっているような人を連れてきて戦わせるとなると、そこでどんなマジックを使うのか。

 そこが非常に難しく、そこも含めて戦場のリアルとは何かを追求するべきだろうと思います。

 無理やり戦場に連れて行かれた農民たちには、相手を殺して出世してやろうという野心はほとんどないでしょう。熱心に相手を殺そうという農民はいません。

 当然、刀を持って相手と斬り合うなんてできません。だから槍を使わせます。遠くから突く。または長い槍でもって敵の頭の上からバンバン叩く。そうやって恐怖心を少しでも取り払って兵隊として機能させたのです。