「つい集めてしまう」「捨てられない」「自然と集まっていた」……。なぜかモノを“蒐集”してしまう人たちがいる。一体彼らはどのような思いで、特定のアイテムに夢中になっているのか。
ここでは、年齢も職業も住む場所も異なる彼らの生活に迫った『コレクターズパレード 100人の収集生活』(小鳥書房)の一部を抜粋。昆虫館で学芸員として働く男性がピンセットを収集し続ける理由に迫る。
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床から生えてくるピンセット
ピンセットは、人の手の代わりに物をつまむ道具です。形状や大きさはさまざまで、素材も金属、竹、プラスチック樹脂など多様です。昆虫の研究者は、標本作製や、解剖、飼育作業などで使用します。特に、顕微鏡下で微小な昆虫を解剖するような作業には、時計職人が使うスイス製の精密なピンセットが最適です。
大嫌いなカメムシを絶滅させようと思い立った大学生の頃の私は、カメムシをなるべく触りたくありませんでした。直接触れずに研究を進められるピンセットは、まさに救いの神のような存在でした。
また、ピンセットは研ぐなどして使いやすく調整できます。手をかけて育てる楽しさがあることも魅力のひとつです。
使い心地の良いピンセットを手に入れると、予備が欲しくなり、さらに良いものを探したくなります。そうして買いあさるうち、気づけば所有数が400本を超えていました。収集自体は目的ではないので、今は新しいピンセットを購入しないようにしています。不思議なことに、それでも年間に30本ほど増えていきます。多分、部屋の床から生えてきているのだと思います。

