日本人の約5人に1人は「慢性腎臓病」だといわれている。しかし、多くの人はその事実に気づいていない。なぜなら、腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気が進行しても自覚症状がほとんど出ないからだ。
腎臓専門医としてこれまで5000人以上の患者を診てきており、『腎臓の教科書 体液の循環・浄化から見る驚異の生命維持システム』(講談社 ブルーバックス)の著者である埼友クリニック外来部長の髙取優二氏に、慢性腎臓病の恐ろしさについて聞いた。(全2回の1回目/続きを読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年1月10日配信)
「サイレントキラー」と呼ばれるのはなぜか
――慢性腎臓病は「サイレントキラー」と呼ばれているそうですね。
髙取氏 そうなんです。慢性腎臓病に関しては、初期から中期にかけてまったく痛みや症状がないんですよ。症状が出てくるのは末期になってからなので、腎臓自体が「沈黙の臓器」と言われ、慢性腎臓病のことは「サイレントキラー」と呼ばれています。
――症状が出ないのは怖いですね。
髙取氏 だからこそ、定期的な検査が重要です。検査は、検尿検査と血液検査が中心になります。検尿検査では、腎臓の濾過機能に異常がある時に、本来出るはずがないタンパク質や赤血球が漏れ出ます。血液検査では、クレアチニンという項目が重要で、女性で1.0、男性で1.2を超えると、腎臓の機能が低下している初期段階と考えられます。
心筋梗塞・認知症・脳梗塞との関係
――腎臓が悪くなると、他の臓器にも影響が出るそうですね。
髙取氏 腎臓は体の中心的な臓器で、心臓、脳、肺、腸、肝臓など、様々な臓器と連関しています。これを「臓器連関」と言います。
――具体的にはどのような影響があるのでしょうか。
髙取氏 例えば、心臓との関係で言うと、腎臓が悪くなると水分量がコントロールできなくなり、血管の中に水が溜まっていきます。すると心臓に負担がかかって、心肥大や心不全が起こることがあります。また、腎臓機能が落ちると血管が痛んでいくので、狭心症や心筋梗塞といった心血管合併症の頻度が増えることもあります。
