35歳で妊活に専念するためのツアー休養を発表し、36歳で双子を出産。そして翌年にはツアーにも復帰した有村智恵(38)。

 しかしアスリートとして一線で戦える残り時間と出産のタイムリミットで板ばさみになり、家計を支える大黒柱としての責任まで加わった悩みは体験したことがない深さだった。「なんで私は女なんだろう」と自らの性別まで呪った日々について話を聞いた。

ゴルファーとしてのキャリアと出産のタイムリミットの板挟みに悩んだ有村智恵さん ©文藝春秋 撮影・石川啓次

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――34歳で結婚された後、お子さんについてはどんな風に考えていたんですか?

有村智恵(以下、有村) 子どもは欲しいと思っていたんですけど、結婚して自分の年齢をあらためて意識させられました。ゴルフ界では「まだまだ若いし頑張れるよ」って言われてたし、18歳でプロゴルファーになってから毎年試合と練習だけの繰り返しだったので自分でも年を取っている感覚が全然無くて。でも病院では35歳は“高齢出産”になると言われて、年齢の壁にすごく焦りました。

――アスリートとしての生活と妊活の両立は簡単ではない?

有村 私は体質的にお薬を飲まないと難しいと言われたんですけど、その薬がホルモン系なので試合になるとドーピングになる可能性がありました。通院も試合の合間の月・火しか行けなくて、病院で「また明日来てください」と言われてもその日は遠征に行かないと間に合わない。あんまり現実的じゃないなと思ってました。

「『私はなんで女なんだろう』って何度も何度も思いました」

――体調のケアなども変わりますよね。

有村 アスリートと妊娠って、必要なことが180度逆なんですよ。ゴルフのためには強度が高いトレーニングも必要だけど、お腹に負担がかかるからやめておこうとか、どちらも100%で挑めない状況なのに、それでも試合は次々にくる。メンタルも追い詰められて、「これでゴルフがダメになって、もし子どもも産めなかったら……」と最悪のケースばかり考えてしまっていました。

 

――しかも有村さんは家庭の「大黒柱」というプレッシャーまである。

有村 夫はちゃんと働いてくれていたので、私の場合は食べられなくなる恐怖まではありませんでした。でも自分で働いて自分で稼いで生きようとずっと思ってきたので、ゴルフを犠牲にするのがすごく怖かった。

――女性アスリートはキャリアの大切な時期と出産適齢期が重なっていて、どちらかを犠牲にしなければいけないケースがどうしてもありますよね。

有村 そうなんです。「私はなんで女なんだろう」って何度も何度も思いました。男子プロは子どもが生まれても体へのダメージはほとんどなくて全力でゴルフに集中できるのに、なんで私はこんな苦労をしなきゃいけないんだろうって。