「金メダル」は禁句…「自己表現」のための選手復帰
時間の経過とともに、心がほどけていく。アメリカのリゾート地でスキーを楽しんでいた時に“体を動かすこと”への愛着が戻ったという。そこから週1回、地元の人たちと一緒にリンクで滑ることを楽しんだ。
そして最終的に「競う」のではなく、「自己表現」の手段としてスケートの世界へと戻る。復帰にあたってのポイントは「人生のイニシアチブを握ること」にあったと『ザ・ガーディアン』のブライアン・アーメン・グレアム記者は書く。
「復帰を決めたが、条件があった。
娘を次のミシェル・クワンに育てようと多額の資金を投じてきた父アーサーは、チームから外れる。
“アリサ・リウ社”のCEOはアリサ・リウ本人。衣装、音楽、食事、練習計画、すべての最終決定権は自分にある。
そして何より、結果は重要ではない」
復帰後の彼女のアイデンティティについては、前述のトンプソン2世の記事がリズミカルで歯切れがよい。
「メダルよりもメンタルヘルス。
期待より自立。
才能より人間。
憎しみより祝福。
嫉妬より喜び。
そして何よりも家族」
コーチのフィリップ・ディグリエルモによれば、11月までは「金メダル」という単語は禁句。そして今大会で何よりも大切だったのは、メダルではなくオリンピックという舞台に立つことだった。
「アリサ・リウがいちばん気にかけていたの“金”は、メダルではなくドレスだった。
全身にきらめくスパンコールをあしらったノースリーブの“舞台衣装”を彼女は早く披露したくてたまらなかった。オリンピックという舞台の照明の下で、その衣装はストロボライトのように輝いていた。
それこそが彼女の望み。
きらめくこと。
光を放つこと」



