経済学者・成田悠輔氏がゲストと「聞かれちゃいけない話」をする対談連載。第12回目のゲストは、前日本銀行総裁の黒田東彦さんです。現在の経済状況を黒田さんはどう評価しているのでしょうか。また、異次元緩和を境に増大した国債残高について黒田さんが意外な見解を明らかにしました(構成・伊藤秀倫)。
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総裁打診は唐突だった
成田 安倍政権の大戦略との二人三脚で異次元緩和デフレ脱却作戦を仕掛けたのが黒田さんですが、その野望はいつ固まったのでしょうか。
黒田 アベノミクスは2013年の1月に安倍総理が打ち出したわけです。その前に日銀の金融政策決定会合では、白川総裁のもとで物価安定目標を2パーセントと決めて、それを早期に実現するために金融緩和を行うということまで、決まっていた。
成田 目標は先に決まっていて、その実現のための奥の手が黒田異次元緩和だった、と。安倍政権からの指示や示唆はありませんでしたか。
黒田 それは全然ない。そもそも安倍さんと人間関係といえるものもなかったんです。小泉政権で参与だったときも当時官房副長官だった安倍さんとはほとんど接点はない。
成田 じゃあ総裁打診は唐突に?
黒田 そうそう。2013年の2月だか3月に、いきなりオフィスに安倍総理から電話があって、「日銀総裁に指名したい」と。
高市政権の経済政策は?
成田 そこに至る前に様々な結託があったという噂は妄想ですか。
黒田 イェール大学の浜田宏一先生が推したという話はありました。浜田先生は昔から知っていて。大蔵省主税局の調査課にいた81年、私が『財政・金融・為替の変動分析』という本を書いたら、意外と売れて印税で車まで買えたんですが(笑)、この本について関西の経済学者が集まるカンファレンスで報告することになった。その時、ホテルの同部屋に泊まったのが浜田先生。浜田先生はお好きなんですよね、冷蔵庫からビールを出してガバガバ飲んで(笑)。面白い先生でした。
成田 私も同僚なので、浜田先生の酒豪伝説はよく存じ上げてます(笑)。その浜田先生はじめ、高市政権の経済政策を批判する論客が増えていますね。積極財政・金融緩和を掲げて遅れてきたアベノミクスの亡霊感があるが、今はアベノミクスのときとは日本と世界の経済状況が全く違う、と。どうお考えですか。
黒田 今は逆に円安でインフレなんだから、本来は金融も財政も引き締めるべきだと思います。AIなど最先端技術を財政で支援するのはいいと思うんですけど、物価高対策として「おこめ券」のような形で出しちゃうと、むしろインフレを促進する可能性があると思います。
成田 やはり高市政権の経済政策のビジョンは何か? に行きつきますね。私には何も見えないです。
黒田 どういう戦略で何を変えていくのか、まだ見えづらいですね。
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〈この他、世界や日本の経済について黒田氏の現状認識が語られた。さらに、「いま日銀総裁だったら何をしたいか」と成田氏が訊ねると、黒田氏の意外な見解が明かされた。〉

