北村匠海主演、内山拓也監督の『しびれ』(9月25日公開)がベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品され、現地時間2月15日に公式上映された。多忙なスケジュールの合間を縫って駆け付けた北村が登壇した質疑応答の模様、現地でのインタビューをお届けする。

ベルリン映画祭での北村匠海

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笑いと温かな拍手が会場に広がった

「まず、僕の声を皆さんが聞くは初めてだと思います。伝わってますかね? それを先に伝えさせていただきます」

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 上映直後、主演の北村匠海が壇上で発した第一声だ。会場は1888年設立の科学系の文化・教育機関ウラニア・ベルリン(座席数862席)。深夜過ぎまで、多くの観客が上映後の質疑応答に残った。

『しびれ』上映後に登壇(中央は内山拓也監督)撮影:林瑞絵

 北村が演じる“大地”は、孤独な少年期をくぐり抜けた青年。暴君のように振る舞う父(永瀬正敏)、水商売で稼ぎ、ほとんど家に帰らない母(宮沢りえ)のもと、いつしか失声症に陥った。映画は安易な音楽を拒絶し、足音や風の音といった自然音のその奥にある主人公の心の声に耳を澄ます。張り詰めた映画の余韻に浸っていた観客は、北村の挨拶で緊張が一気に綻び、笑いと、次いで温かな拍手が会場一杯に広がった。

『しびれ』©2025「しびれ」製作委員会

「映画で使われる膨大な余白、これは邦画特有なもので、僕自身は邦画の良さだと感じています。大地は台詞がなく、言葉を出さない。観ることしかしないというところで、その余白をどう泳ぐかが一番の課題でした。今ここにいる内山監督とともに、何を感じて何を手に取って、何を見てどこを歩くのか、そういうところを日々撮影する中で、一緒に掴んでいった感覚があります」

ベルリン映画祭の会見で

「いつか一緒に」という想いが結実

 北村とともに登壇した内山拓也監督は、個人的な経験に根ざした作品に込めた思いを明らかに。「世界中で今いろいろなことが起きている中、どう未来に向かい、その可能性や希望をたぐり寄せるのかというところを、すごく小さな視点や世界から、大きな物語に転換しようと意識しました。背景には社会や文化、政治が密接に絡んでいる。それは日本だけでなく、世界中どこでも認識し合えるものでは。大地に寄り添いながら、その世界を見てみようと思いました」。

 

 参加したのは第76回ベルリン国際映画祭(2月12日~2月22日)パノラマ部門。大胆で型破りな作品を奨励する本部門は、新進監督の作品を積極的に選出。全37本のセレクションの中で、『しびれ』は唯一の日本映画だ。近年数々の日本映画が爪痕を残しており、今年、コンペティション部門の審査員を務めるHIKARI監督は『37セカンズ』(2019)で本部門の観客賞を、行定勲監督は『リバーズ・エッジ』(18)で国際映画批評家連盟賞を、荻上直子監督は『彼らが本気で編むときは、』(17)でテディ賞審査員特別賞を受賞している。