「あの先生、ちょっと精神的に参ってるな」

――治療が医師自身のセルフケアにも繋がっていると。

西村 ええ。例えば「内観療法」という、自分の過去の記憶や親との関係を徹底的に掘り下げて認知の歪みに気づいていく治療法があるのですが、これをやろうと思ったら、医師自身が自分の過去に向き合っていないと絶対にできません。

――しかし、深刻なトラウマを持つ患者さんと日々向き合う中で、医師自身が患者の重い感情や境遇を受け止めきれないこともありそうです。

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西村 あります、あります。患者さんの重い感情や境遇を真正面から受け止めてしまって、医療者側が病んでしまうことは実際にありますよ。人間関係のドロドロした部分を毎日聞かされるわけですからどうしても引き摺りこまれそうになるんです。ただし本当に優秀な医療者とは患者と自分の間にキッチリと線引きができる人です。その点、私などはまだまだ未熟なんでしょうねぇ。

――そうした危うさもある依存症の分野に進もうと決断されたのはどうしてですか。

西村 吉田先生のお仕事を拝見して、こうした分野において自分のバックグラウンドを活かせると感じたことは大きかったと思います。あと、もうひとつ、東大の医局に入れてもらえなかったという事情もあります。

――医局に入れないというのは、どういう状態ですか。