「私の人生の95%は仕事だった」。そう語る国立大の元・医学部長は、アルコール依存症へと転落してしまった――。
38歳で東大理IIIに合格し、現在は依存症治療の最前線に立つ異端の精神科医・西村光太郎氏。彼が診察室で直面するのは、現代社会の残酷なリアルだ。精神医療の最前線から、日本が抱える“底知れぬ闇”を明かす。
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依存症になるのは真面目で息抜きが下手な人が多い
――依存症になる人は、「だらしない人」「自制心のない人」というイメージで語られることが多いですよね。
西村 はい。私自身、勉強をする前は、「意思が弱いから依存症になる」と考えていました。しかし今はそれが無知だったとわかります。むしろ、依存症になる人は、非常に真面目で息抜きが下手な人が多いんです。
――たとえばどのような人がいますか。
西村 私が診たアルコール依存症の患者さんに、有名大学の医学部長を務めた人がいました。研究業績もあり、仕事ができることは疑いようのない人です。出世街道をひた走ってきた人で、「私の人生の95%は仕事だった」と言ったのが印象的でした。
話を伺うと、退官後に仕事の重圧から解放されて、お酒が手放せなくなってしまったといいます。重たい責任を背負っている勤勉な人ほど、タガが外れてしまうと酷い状態になるんでしょうね。
――むしろ責任感が強い人がなりやすい。
西村 その通りです。私が診察した患者さんで、有名企業の2代目社長もそうでした。その人は非常に仕事ができて有能ですが、先代社長がワンマン気質で支配的だったそうです。でも、仕事はしっかりとこなさないといけない。そして、仕事の重圧から、アルコール依存症に陥ってしまいました。
先代は2代目の奥様に対して「お前がちゃんとしないから息子がこうなった」と責めたそうです。責任感が強かったり、親子関係が複雑な人ほど、依存症問題がこじれやすいと私は考えています。
――病気なので治療が必要にもかかわらず、“心療内科”にかかることを嫌う風潮もありますよね。
