高校球児はなぜ丸刈りなのか?
夏の甲子園100回大会、その出場56校の90%以上が“坊主”派だという。
丸刈りであるのには合理的な理由があるのだろうか? 丸刈りでなければ高校野球では強くなれないのだろうか?
出場校のなかで、選手たちが自主的に髪型を選択している高校があった。土浦日大高(茨城)である。
自ら進んで丸刈りにする選手もいるという同校を取材した。
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校則に準じた頭髪であればOK
土浦日大は坊主頭の選手の中に、ちらほらと、やや髪の毛の長い選手がいる。
2016年に就任した小菅勲監督が説明する。
「僕がきてからは、(髪の毛を)伸ばしてもいいよ、って言ってるんです。いろんな頭の形をしている選手がいるし、ハゲのある子だっていますしね(笑)。でも、うちも伝統校ですから、高校野球はこういうもんだって、坊主にする選手が多かった。坊主が好きなやつもいるんですよ。今の3年生くらいからですね、ちょっと伸ばす子が出てきたのは」
臼井章文部長はこう補足する。
「校則に準じた頭髪ということです。校則で、端正な頭髪という決まりがありますから、その中で自由にしていいよと」
「のびのび野球」木内幸男の教え
小菅監督は高校時代、1984年夏に取手二高の三塁手として全国制覇を経験している。恩師は、いわゆる「のびのび野球」の元祖・木内幸男である。30年以上も前だが、取手二では水も自由に飲めたし、冬は髪を伸ばしても何も言われなかった。
そうした木内の指導方針は常総学院に移ってから、さらに拍車がかかった。2003年の優勝メンバーで捕手として活躍した大崎大二朗の言葉だ。
「髪は長目でも何も言われませんでしたね。逆に3年生は5厘とかにすると怒られる。大学のセレクションがあるじゃないですか。そのときに5厘とかだとやらかしたみたいなイメージを持たれてしまうので」
その話で思い出したが、ある高校の指導者はアメリカへ修学旅行に行ったのをきっかけに考え方が変わり、丸刈りをやめたと話していた。旅行会社にアメリカで丸刈りにしていると脱獄囚と間違えられ、最悪の場合は銃口を向けられる可能性があると指摘されたというのだ。修学旅行の前までに髪を伸ばさせ、以降も、丸刈りの強制をやめた。