従来の野球が正しいわけではない
木内の頭髪に対する考え方は野球にも生きていた。小菅監督が言う。
「僕らは結果を出せましたが、管理されていたわけではない。監督が枠をつくったら、その枠の中の野球しかできなくなってしまうと思うんですよね。打撃でもフルスイングしたいやつもいれば、センター返しに徹するやつもいる。自分のやりたい野球の表現というのがあると思うんです」
従来の野球では、ややもすれば、それはチームプレーに反すると言われるのではないか。
「従来の野球が正しいわけではないじゃないですか。今年のチームは(髪を伸ばす選手が出てきて)おまえららしいねー、という感じは出て来てると思います」
――監督は坊主をどう思いますか?
「今の時代には、ふさわしくないと思っています」
「大学野球はみんな長いですし……」
控え投手の清水樹は、もともとは坊主だったのだろうが、もう坊主とは言えないほどに伸びていた。
「茨城大会の1か月前くらいに気合いを入れるために切って、そこからは切ってません。中学のときから坊主なので、動きやすいという印象があって。でも、それも心の問題ですよね。大学野球はみんな長いですし。髪を伸ばしてから、なんか、周り(の状況)が見えるようになった気がします」
ライトの木原琉位は「短髪」と呼ばれる髪型に見えたが「伸びた坊主」ですと笑った。
「土浦日大の野球はクレバーな野球なんで、坊主じゃない方が似合うと思う。坊主じゃなくても野球がうまいっていうのがいちばんカッコイイじゃないですか。髪を伸ばしていて、どうのこうのって言われたこともありますけど、そんなの関係ないんで」
坊主の方が楽なんで、自分たちで刈ってます
一塁手の小菅康太は、どこからどう見ても坊主頭だった。
「寮生活で、なかなか髪を切りに行けないので。バリカンで自分たちで刈ってます。坊主の方が楽なんで」
それにしても不思議なものである。自分の意志で丸刈りにしているのだと思うと、見え方がガラリとかわる。
いいな、と思えた。
坊主頭への違和感――。その正体は、髪型そのものにあるのではなく、「半強制的に同じ髪型にさせられている」ことにあった。