「オッパイが気に食わない」10代で向けられた性的な目線

『大地の子守歌』封切りの4カ月後に公開されたのが、先日逝去した長谷川和彦監督のデビュー作『青春の殺人者』(1976年)だ。両親を殺害した主人公(水谷豊)の恋人を演じた原田は、冒頭近くから豊満な乳房を露わにして全裸も披露している。

 17歳の原田は30歳だった長谷川監督をはじめ、若いスタッフたちと夢中で撮影を行い、ゲリラ撮影だったクライマックスの火事の場面も体当たりで演じた。後に長谷川は映画祭のトークショーで「美枝子は一番いい度胸していた」と語っている(MOVIE WALKER PRESS 2022年10月25日)。

19歳の原田美枝子

 新人離れした鮮烈な演技を見せた『大地の子守歌』と『青春の殺人者』の2作品で、原田は数多くの映画賞に輝く。しかし、原田が世間に“見つかった”きっかけは、テレビで流れたジュース「サントリーオレンジ50」のCMだった。童顔で愛らしい原田の揺れる乳房に世の男たちの目が釘付けになった。

ADVERTISEMENT

 男性週刊誌の好奇の目は特に露骨だった。多くの中年知識人たちが原田に対談を申し込み、もれなく胸と裸を話題にして、彼女はそのたびに不機嫌になった。『青春の殺人者』の原作者である中上健次は、対談相手の宇崎竜童に映画について尋ねられて「オッパイが気に食わなかったんだ、俺」「原田美枝子のオッパイがでかすぎるんだ」と繰り返している(『中上健次全発言 1970-1978』集英社)。映画雑誌に載った原田に関する情報の横に、上半身裸で胸を自分でまさぐっているイラストが添えられたこともあった。これが世の男たちの視線だった。