先輩俳優に「お前の芝居は汚ねえんだよ」と罵倒され…

 “魔性の女”楓の方を演じた原田は眉を剃り落とし、全身全霊で作品に打ち込んだ。松田は『乱』での演技を見て「別人だったな」と賞賛したという(『松田優作クロニクル』キネマ旬報社)。

 実は『乱』の直前、原田の俳優人生の中でもっとも衝撃的な“事件”が起こっていた。共演した先輩俳優から電話で「お前の芝居は汚ねえんだよ」と罵倒されたのだ。先輩の痛罵はあらゆる面に及んだ。「芝居の一つ一つが粗い。生き方も大事にしろ」。実際に作品を見たら、指摘通りだと思った。恥ずかしくて俳優を辞めて死のうかと思った。

原田美枝子 ©文藝春秋

 当時のインタビューでもそのことを話しているが、誰からの電話だったかは明かしていない。2011年、鈴木隆が聞き手を務めた『俳優 原田美枝子 映画に生きて生かされて』(毎日新聞社)では、ついに電話の相手を明かしている。『もどり川』(1983年)で共演した萩原健一だった。原田は萩原に深い感謝を捧げている。

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 虐待をテーマにした『愛を乞う人』(1998年)では、苛烈な母親と虐待された娘の二役を演じて高い評価を得た。監督の平山秀幸は『青春の殺人者』のスタッフである。役作りでパニックになったとき、思わず心の中でつぶやいた言葉は「優作さん、助けて」だったという。原田は順調にキャリアを積み重ねていき、日本映画になくてはならない存在となった。

 石橋凌との娘、石橋静河も実力派俳優としての地位を確立しつつある。2026年秋のNHK朝ドラ『ブラッサム』では主演を務めることが決定した。母娘での共演も期待されている。

 巨匠たちに育まれ、松田優作、勝新太郎、萩原健一という個性的すぎる先輩たちに刺激を受けてきた、ただものではない原田美枝子の俳優人生は、まだこれからも続いていく。

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