アメリカとイスラエルによる軍事攻撃でイラン最高指導者のハメネイ師が殺害された。1月のベネズエラでの特殊作戦に続く、アメリカによる軍事介入となる。
第1次トランプ政権の国家安全保障担当の大統領副補佐官だったマット・ポッティンジャー氏は、文藝春秋の連載「投資家のためのディープな地経学」の最新回で、トランプ氏が軍事介入で何を最優先しているかについて語った。その一部を紹介します。(近藤奈香訳)
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「2026年」は「1989年」に匹敵する転換の年に
2026年の年明け数週間は、出来事があまりにも多く、私は地政学におけるもう一つの転換点である「1989年」を思い起こさずにはいられません。中国では民主化を求める人々が天安門広場を埋め尽くし、ドイツではベルリンの壁が打ち壊され、さらにソ連崩壊の種が芽吹き、やがて花開き始めた年でした。
1989年と今年の決定的な違いは、想定され得る結末の幅が、当時とは比べものにならないほど大きい点にあります。ベネズエラ、キューバ、イランといった国々では、権威主義体制が崩壊する可能性がある一方で、ドナルド・トランプ大統領による同盟国への高圧的な対応をきっかけに、カナダやイギリス、さらには他の民主主義国までもが北京に接近し、民主主義陣営そのものが分断され、弱体化する恐れもあります。
今年とは対照的に、1989年は滑り出しは比較的穏やかでした。ジョージ・H・W・ブッシュがロナルド・レーガンの後を継いで大統領に就任し、ワシントンとモスクワの関係は雪解けに向かっていました。ソ連はアフガニスタンから最後の部隊を撤退させ、その年は戦略的安定のもとで推移するかに見えました。
しかし、歴史はそこから急転します。ポーランドでは、民主化を掲げる「連帯」運動が、部分的に自由化された歴史的選挙で大きく前進しました。中国では体制への抗議運動が全国に広がるも、最終的には天安門事件として人民解放軍による武力鎮圧に至ります。11月には、ベルリンの壁が崩壊し、東欧の共産主義政権が相次いで倒れ、冷戦の終結が決定づけられました。
2026年は、まだ始まったばかりです。しかし、世界の動向に大きな影響を与えるトランプ氏や習近平氏など指導者たちの決断が、今後、数十年にわたる民主主義と権威主義の趨勢を左右することになるでしょう。今月のコラムでは、地政学の行方を決定づけるいくつかの重要な分岐点について考察していきます。
