1989年に東京・綾瀬で起きた「女子高校生コンクリ詰め殺人事事件」。複数の少年が女子高校生を40日間にわたって監禁し、強姦・暴行のすえに殺害した事件の加害者のその後を追った『償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って』(文藝春秋)が1月に刊行された。著者の山﨑裕侍氏(北海道放送報道部デスク)は、25年以上にわたって加害者たちを取材してきた。準主犯格Bの再犯と孤独死、なぜ誰も通報しなかったのかという疑問、そして「償うこと」の難しさについて語った。

山﨑裕侍氏 写真=橋本篤/文藝春秋

拘置所で対面した準主犯格Bの「不可解な表情」

 山﨑氏が最も深く取材したのは、準主犯格のBだった。出所後にIT関連の仕事に就き、月40万円を稼ぐこともあったというBだが、職場で事件のことが知られていると思い込み退職。その後、再犯事件を起こして逮捕された。

「面会室に現れたBは、風貌はどこにでもいるヤンキーでした。ただ、目や表情は寒気を感じさせるような不可解な感じでした」と山﨑氏は振り返る。拘禁反応による被害妄想が強く、「何を考えているのか分からない感じ」だったという。

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 しかし山﨑氏は、Bを単純な悪として切り離すことはしない。「普通の状態で彼らの行為をみたら、よくもこんな酷いことが出来るなと思います。戦争もそうですよね。家に戻れば良き父親、良き夫が、戦場という極限状態では残虐なことをやってしまう」。

「ことの残酷さと、日頃見せる普通の顔。このふたつが、どうつながっているのかを見るのがジャーナリズムだと考えます」と山﨑氏は語る。犯罪者を「我々とは全く別の種類の人間」として切り離してしまうのではなく、地続きの存在として捉える視点を重視している。

 Bは2022年の夏、51歳でアパートのトイレで孤独死した。母親が毎日3食分の弁当を届ける生活を送っていたが、「結局、Bはコンクリ詰め殺人事件の被害者に償うことはなかった」と山﨑氏は記している。

 取材を通じて山﨑氏が感じたのは、「償うこと」の困難さだった。「答えがないからといって、どうすれば償えるかを考えなくていいのかというと、そうではない。答えのないことを考え続けることが、償い続けるということなのではないでしょうか。この、続けるということが大事なんだと思いますね」。

 25年以上の取材を経て完成した『償い』は、事件の加害者それぞれが「微妙に反省の度合いも違えば、その後の生き方も違う」現実を浮き彫りにしている。

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