いよいよWBCが開幕し、連覇をかけた侍ジャパンの戦いが始まった。前回の2023年は、いくつもの劇的な死闘が繰り広げられたが、中でも代表的なのが準決勝のメキシコ戦だ。
伝説となった「大谷翔平の雄叫び」、そして不調だった村上宗隆のサヨナラ打の舞台裏を、読売ジャイアンツ・戸郷翔征の著書『覚悟』(講談社)から一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前回を読む)
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メキシコ戦「伝説の逆転劇」の舞台裏
メキシコ000 300 200=5
日 本000 000 312=6
【メ】サンドバル、アルキーディ、ロメロ、クルーズ、レイエス、●ガイェゴス―バーンズ
【日】佐々木朗希、山本由伸、湯浅京己、○大勢―中村悠平、甲斐拓也、大城卓三
本塁打=ウリアス1号3ラン(4回)、吉田正尚2号3ラン(7回)
9回裏、まず同点に追いつかなくてはなりません。送りバントは絶対失敗できない状況です。8回裏、源田壮亮選手(西武)の送りバントのときも、メキシコの内野守備陣はバントシフトを仕掛けてきました。準決勝ともなると、それまでの相手に比べてやはりレベルが高かったです。
牧原大成選手(ソフトバンク)以外、野手陣は全員を使い果たしていました。城石憲之コーチ(ヤクルト)の証言によれば「ベンチ裏で牧原選手は顔面蒼白だった」そうです。牧原選手も「吐きそうな気持ちだった」と、重圧の胸のうちをのちに話されていました。
バッターとピッチャーで、途中出場の緊張感は少し違うと思います。ピッチャーの僕の場合は先にお話ししたように「第2先発」でした。リリーフではありますが、塁上にランナーがたまっているのを抑えにいくのではなく、ランナーがいないイニングの頭から投げさせてもらえます。だから「いい緊張感」とでも言うのでしょうか。
ランナーを二塁以上の得点圏に置いてマウンドに登るリリーフピッチャーなら、ランナーを絶対にホームに還してはならないという「追い込まれた緊張感」があります。
バッターの場合、途中出場で試合の流れに入り込まなくてはならない「緊張感」。塁上のランナーを絶対に送らなくてはならないバント。もしバントを失敗してヒッティングに切り替えてダブルプレーになったら、「ノーアウト一、二塁」のチャンスが、一瞬のうちに1点ビハインド「2アウト三塁」にかわります。大変な重圧がのしかかると推測します。

