「遺族が声をあげにくいということが、事件の風化にもつながる」

 番組では最終的に、カメラ撮影に応じてくださったご遺族や、直筆でお気持ちをお寄せくださったご遺族の声を中心にお伝えすることになった。しかし取材者として日頃から感じているのは、放送では伝えきれなかった方々の声ひとつひとつに、大切な意味が込められているということだ。

 火災に巻き込まれて亡くなった女性の友人への取材で、はっとさせられた言葉がある。

「遺族が声をあげにくいということが、事件の風化にもつながるのではないか」

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 当時は亡くなった方々に対し、「あんな場所にいたほうが悪い」という心ない言葉も向けられた。ご遺族も被害者であるのに、後ろめたさなどから声をあげられない、身を隠さざるを得ないということは、二重の苦しみをもたらすものだったと想像する。一方、今回取材に応じてくれたご遺族からは、「事件を無かったことにはしないでほしい」という悲痛な思いも、数多く寄せられた。

 報じることがかえって被害者の尊厳やご遺族の心を傷つけることにつながってしまわないか、常にそのジレンマと向き合い続けた取材だった。その明確な答えはいまも見いだせていない。それでも私たちは、あの火災で44人の命が奪われた現実が社会の記憶から消え去ることのないよう、今を生きる人たちの心に届く形を模索しながら、伝え続けなくてはならないと思っている。

 最終的に「放火の可能性が高い」とされながらも、事件の捜査を阻んだものは何だったのか。「犯人が見つかったら、ひと言、『どういう気持ちで生きてたの?』って聞けたら…」と語る遺族の思いとは。後編に続く。

次の記事に続く 遺族は犯人に「どういう気持ちで生きてたの?」と聞きたいと…「放火の可能性が高い」→「それでも“未解決”」捜査のジレンマ