2000年代半ば、女性芸人がいまほど脚光を浴びる前夜。「山田邦子の再来」とも称された実力派がいた。田上よしえ。軽快な話芸と確かなネタ力で頭角を現し、“史上最もシビア”と恐れられた爆笑オンエアバトルでは、女性芸人で唯一「ゴールドバトラー」の称号を手にした。

 だが、彼女は突如として芸人を引退する。時代がようやく女性芸人に追いついたその矢先だった。なぜ舞台を降りたのか? お笑いコンビ飛石連休・藤井ペイジ氏の新刊『芸人廃業 ダウンタウンになれなかった者たちの航海と後悔』(鉄人社)より、一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

田上よしえはなぜお笑いをやめたのか? ©文藝春秋

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「芸人を辞めた」

――この前、久しぶりによしえちゃんと会ったら、なんと「芸人を辞めた」って言うから。びっくりしたよ。

田上 まあ大々的には告知してなかったからね。

――生まれ年(1972年)が同じで、ほぼ同期。同世代の芸人がいっぱい辞めていったけど、「この人はずっと芸人を続ける人」だと思ってたから。事務所のホームページとかSNSで「芸人辞めます」って発表しなかったの?

田上 何もしてないんですよ。なので今回、周りにアナウンスするいい機会を藤井くんにもらいました。あざーす!

――軽いなあ(笑)。正式にはいつ辞めたの?

田上 自分のなかで「よし、辞めよう」と見切りをつけたのは去年の頭。2022年の1月です。

――でも人力舎にはまだ所属してるでしょ?

田上 してますよ。だから、別に事務所を辞めるわけじゃないし、芸能界も辞めるわけではないので、どう告知していいかわからず。ほんのりそのままにしてたら、日が経っちゃってて。

――そうなんだ。じゃあこれから何をしていくの?

田上 それですよね。お芝居を本格的にやりたいんですよ。女優に転身です。

――じゃあ芸人稼業はもうやらない。

田上 やらないです。舞台でネタとかはね。「新ネタを作り続けないといけない地獄」から、お先に抜けさせてもらいました。

――あっはっは! 例えばゴールデン帯のネタ番組で、「オンバト芸人はいま」とか、そんな枠で出てって言われても出ない?

田上 んー……。

――出そうだな!

田上 いやまあ、そういうのは「催し」というか「お祭り」じゃないですか。それならぜんぜんやりますけど、自分のことを「現役の芸人」とうたって舞台でネタをやることは、もうないですね。

――事務所には伝えたの?