「死にたい」と悩む子どもとの向き合い方

――司法面接や系統的全身診察のあとは、どのような支援をされるのですか?

飛田 まず必須になるのが、「加害者との分離」です。どんなトラウマでも同様ですが、精神的にも物理的にも加害者と離れ、子どもの安心・安全を守らなければなりません。

 すると、多くの子どもは生活が一変します。以前の自宅から引っ越し、転校する子もいれば、性加害者の父親から逃げるために母親と一緒に見知らぬ場所に引っ越す子もいます。裁判になれば警察や法廷に同行したり、安全な暮らしを守るために金銭的支援をしたり、携帯電話を貸し出したり……子どもを取り巻く環境により、支援内容は多岐にわたります。周囲に頼れる大人がいない場合、10年以上にわたって支援を続ける子もいます。

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中には「死にたい」と悩む子どもも少なくない ©takasu/イメージマート

――トラウマのケアもされているのですよね。

飛田 子どもに不眠やうつなどの症状があれば、医療機関と連携しながら適切な処置を施します。なかには「死にたい」という気持ちが消えない子もいます。被害に遭った当時の気持ちが“冷凍保存”されて、死にたい気持ちが出てきてしまっているんです。そんなときは、まず過去の自分を安心させてあげることが大事になります。例えば、こんな話をします。

「死にたい気持ちは自分を助けにきてくれる気持ちなんだよ。だから、その気持ちを否定しなくていいんだよ。なぜ死にたい気持ちになってしまうかというと、その前の気持ちが死ぬよりも辛いことだから。今の前にあったのは、どんな気持ちだった?」

 すると、「恥ずかしい」「相手を殺してやりたい」「大人はみんな信用できない」「私(僕)が悪かった」とか、いろんな言葉が出てきます。「じゃあ、もしあなたが私(カウンセラー)だったら、辛い気持ちを抱えた当時の自分にどんな言葉をかける?」と聞くと、大体の子は「分からない」と言います。

――なかなか言葉にはできないですよね。

飛田 そこで、「もう危ない人はそばにいないよ」「あなたは悪くないよ」「私たちは、みんなあなたの味方だよ」といった言葉をかけます。トラウマケアは、そうやって一つひとつの気持ちに配慮しながら、繰り返し行います。湧き出てくる負の感情や記憶を、どうコントロールしながら生きていくかを練習するような。完全回復するというより、一生をかけて緩やかに回復していくイメージです。