「週刊文春」および「週刊文春 電子版」で2月末にスタートした短期集中連載「村上世彰とフジテレビ『20年目の復讐劇』」。2006年に『ヒルズ黙示録 検証・ライブドア』『ヒルズ黙示録 最終章』を上梓して以来、村上氏を追い続けてきた記者の大鹿靖明氏が執筆するスクープ連載第3回より、一部を抜粋してお届けする。

 フジ・メディア・ホールディングスは村上世彰の攻勢を受けていた。狙われたのはグループの一角をなす不動産事業、つまり子会社サンケイビルだった。利益を生み出し続ける“虎の子”を巡って、フジ側は、ある決断を下す。

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村上世彰が送りつけた質問状

 村上世彰は1月21日、フジ・メディア・ホールディングス(FMH)の清水賢治社長に対して3点からなる質問状を送りつけた。1つは「不動産事業の位置づけを明らかにしてほしい」、そして「(不動産事業の)スピンオフと完全売却を比較検討した考えを明らかにしてほしい」、最後に「ROE(自己資本利益率)8%をどのように達成するか考えを聞かせてほしい」の3点である。

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 村上はすでにFMH株を17.95%も保有する事実上の筆頭株主になっていた。無下には出来ない相手である。彼の問題意識はダルトンやSBIの北尾吉孝など他の株主が問うていることとも重なる。FMHはこの日、「対応については検討を進めていき、公表すべきことを決定した場合は速やかに開示します」と宣言し、村上との交渉のテーブルにつくことにした。

 村上の狙いは、その質問状にあるように、FMH傘下の優良不動産子会社サンケイビルである。そのために清水が「改革アクションプラン」において公約した「ROE8%実現」を逆手に取ろうとしていた。

 村上が言うスピンオフとは、FMHが100%保有する非上場のサンケイビルの株式を、FMHの既存株主に割り当てる「株式分配」をいう。村上はFMH株を17.95%持っているので、スピンオフすれば自動的にサンケイビル株の17.95%が手に入る。