肉が焼ける匂いは嫌なものではないが、内臓の匂いはぜんぜん違う
――よく知っている?
下駄 タレをつける前の焼き肉の匂いです。だから、嫌なものではないんですよね。ただ、内臓の匂いはぜんぜん違う。表現が難しいのですが、おっちゃんの鼻や耳の後ろの脂の匂いを、極限までツンッとさせたような感じですね。
普段の火葬では、炉に煙や匂いを吸い取る吸引装置があるから、ある程度抑えられているんです。でも炉を開けてご遺体を移動させるとなれば、火葬場にもツンッとした匂いが広がってしまう。
実際に経験した方の話では、匂いがご遺族さんに伝わらないように徹底して換気をした、と言ってましたね。
――できるだけ炉の移動を避けたいとお話しされていた理由が、よく分かりました……。そもそも予備のバーナーがなかったというのは、どういった事情なのでしょうか。ミスなのか、それとも買い置きをする慣習がないからなのか。
下駄 詳しく聞いたわけではないのですが、おそらく後者だと思います。火葬場は、改築や新設の話が出るだけで近隣から反対運動が起こることもある施設ですから。めったに起きないトラブルを想定して、安くはない予備のバーナーを買い置きしておくことを、「無駄遣いだ」と思う人はいるでしょうね。
焼骨をきれいに残すために炉内の温度を制限
――失火以外にも、火葬が途中で止まるケースというのはあるのでしょうか。
下駄 止めないといけない場合もありますね。例えば、炉内の温度が上がりすぎたとき。ご遺体の体格が良かったり、棺の中に大量の手紙や本を入れていたりすると、火葬の最初の段階で一気に燃え上がって、温度が急上昇してしまうんですよ。
――温度が急上昇すると、どんなことが起きるのですか。
下駄 火葬炉は、炉内の煙やガスが外に漏れないよう、吸引装置で炉内の空気を引き込む仕組みになっているんです。ところが燃えすぎると炉内の圧力が高まって、その吸引力を超えてしまう。
そうなると、火葬場の煙突から黒煙がもくもくと上がってしまいます。当然、近隣の方からのクレームや役所からの問い合わせが殺到しますから、止めざるを得なくなるんです。
他にも海外では、炉が爆発して火葬場が火事になってしまった事件もいくつか報告されています。日本はお骨上げをする前提で火葬しているので、焼骨をきれいに残す必要がある分、炉内の温度を制限しています。
一方でお骨上げの文化のない国では、骨を残す必要がないから炉内の設定温度が高い。高温で一気に焼ける分、事故のリスクも高いんですよ。
