ご遺族が「待って」と台を引っ張り…人為的要因によるトラブル
――こうした機械由来のトラブルだけでなく、人為的な要因で火葬が止まることもあるのでしょうか。
下駄 あります。最近は、火葬場でも自動化が進んできています。例えば、少し前までは手動で棺を炉に入れていましたが、今は自動で動く台に載せて、ウィーンと送り込むところが増えてきています。ご遺族さんがその動いている台を「待って」と引っ張ってしまって、ピーッと緊急停止してしまったことがありましたね。
他にも、棺の上にお花などをたくさん乗せすぎて、炉の入口に引っかかってしまったこともあります。
どのケースも、私たち職員は内心「やばい、このままだと火葬が中断してしまう」とヒヤヒヤしています。でも、その焦りをご遺族には絶対に見せてはいけないんです。「特に問題ありませんけど?」という顔でご遺族を安全な場所に誘導したり、ご遺族から見えない場所で火葬の障害になりそうな物を取り除いたりしています。
ご遺族への対応には「正解」がない
――焦りや不安を見せないように意識しているのは、悲しみにくれるご遺族の気持ちを考えているからなのでしょうか?
下駄 もちろんそれもあります。でもそれ以上に、時間通りにスムーズに火葬を行うためですね。たとえば台を緊急停止させてしまった方に「危ないのでやめてください」と注意してしまうと、他のご遺族さんたちも「お前、何やってるんだ」とその方を責め始めてしまうかもしれない。そうなると、その後の工程をスムーズに進めづらくなるんですよ。
その場の空気が険悪になってしまうと、火葬後のお骨上げもぎくしゃくしたまま進めることになってしまいます。揉めれば時間もかかって、次に控えているご遺族の火葬にも影響が出てしまいますからね。
――機械のトラブルには、マニュアルや経験に基づいた対処法がある。一方で、ご遺族の対応となると、そうはいかないことも多いのではないでしょうか。
下駄 ほんとうに。失火したらバーナーを替える。温度が上がりすぎたら火を止める。機械のトラブルには、何かしらの「正解」があることがほとんどです。
でも、ご遺族への対応となると、話は別です。相手が違えば状況も違う。その場その場で判断するしかないんですよね。だからいまだに、「あの時の対応はこれでよかったのか」と悩むこともあるんです。
撮影=細田忠/文藝春秋
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「火葬場を覗く展」開催のお知らせ
火葬場の知られざる現場を紹介する展示イベント「火葬場を覗く展」が、3月21日(土)から29日(日)まで開催される。元火葬場職員・下駄華緒さんによる展示や解説を通して、普段は知ることのできない火葬場の仕事や実態を知ることができる。
【開催概要】
開催日:2026年3月21日(土)〜3月29日(日)
時間:10:00〜18:00(最終入場17:30)
会場:文春ギャラリー紀尾井町
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-23
予約ページ
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公式HP
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ショートCM
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