故人のご遺体を火葬し、その人生を締めくくる場所「火葬場」。今でこそクリーンな運営をしている場所が多いが、かつては火葬場で陰惨な事件が起きていたこともある。いったい、どんな事件が起こっていたのか——。

 ここでは、元火葬場職員・下駄華緒氏が、火葬場で起きた事件を徹底調査してまとめた書籍『火葬場事件簿 一級火葬技士が語る忘れ去られた黒歴史』(竹書房)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

写真はイメージ ©アフロ

◆◆◆

ADVERTISEMENT

成人女性の遺体に行われた卑劣な行為

 戦前の火葬場では、現代の常識からは考えられない事件が起きていた。

 大正12年(1923)8月、熊本のとある火葬場に勤める42歳の職員が恐るべき犯行をおこなった。

 その日、火葬場には8歳の少女と、23~24歳ほどの女性4名の遺体が運び込まれていた。喪主が火葬場に棺を入れて鍵をかけ帰宅したあと、男はこっそりと裏に回って棺を引きだした。

 そして遺体から衣服を剝ぎとり、さらに指輪や金歯など金になりそうなものを残さず盗んだ。

 犯行はそれだけに留まらなかった。成人女性のうちひとりの遺体に対して、してはならないことをしたのである。

 当時の報道によると「死體を侮辱す驚くべき隠亡の罪惡」「肉體に侮辱を加へたといふ戦慄すべき事実が暴露」と書かれている。

「侮辱」がどういったことなのかについては具体的に書かれていないが、おおむね想像はつくだろう。

 人の欲望とは恐ろしいものである。

寺の墓地から遺体が消失

 同様の事件は昭和に入ってからも起きていた。

 昭和7年(1932)5月、神奈川県の大磯町にてとんでもない事件が起きていた。寺の墓地からある遺体が消失したのである。

 消えたのは、同町に住んでいたY子さんという若い令嬢の遺体。生前は、町じゅうで噂になるほどの美人だったそうだが、恋仲の学生とともに心中を図り、この世を去った女性だった。

 いったいどこに行ったというのか……。地元は「死美人紛失」として大騒ぎとなり、連日捜査がおこなわれた。

 そして発覚から10日後、留置所にいたH本長吉という65歳の火葬場職員の男が、自分の犯行であると自供した。

 この男は何が目的でY子さんの遺体を持ち去ったのか。