故人のご遺体を火葬し、その人生を締めくくる場所「火葬場」。今でこそクリーンな運営をしている場所が多いが、かつては火葬場で陰惨な事件が起きていたこともある。いったい、どんな事件が起こっていたのか——。

 ここでは、元火葬場職員・下駄華緒氏が、火葬場で起きた事件を徹底調査してまとめた書籍『火葬場事件簿 一級火葬技士が語る忘れ去られた黒歴史』(竹書房)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

写真はイメージ ©アフロ

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同僚が見かねて告発した「衝撃的な蛮行」とは

 己の欲望を満たすため女性の遺体にひどい行為をする事件。およそ理解できないこの所業は、じつはほかにも起きていた。

 昭和40年代、滋賀県のとある火葬場。そこで働いていた職員が、同僚の行為のひどさを見かねて告発し、その一部始終が当時の週刊誌「週刊読売」に掲載された。とても衝撃的だったので紹介しよう。

 記事のなかでは告発者の職員はNさんとされている。彼は昭和46年(1971)から見習いとして働いていた。

 その火葬場では周辺住民に配慮して夜間に火葬をおこなうことが多かった。したがって、昼に運びこまれた遺体を棺ごと火葬炉へ入れてもすぐには点火しない。鍵をかけ遺族に鍵を渡したあと、夜まで待つ。

 この日は若い女性の遺体が運ばれてきていた。若い娘を亡くした父親や親族の方々が涙ながらに線香を手向ける。

 最後のお別れが済むと、火葬炉に棺を入れて鍵をかけ、遺族は帰路につく。帰りはマイクロバス型の霊柩車で家まで送ることになっていた。

 このとき遺族をバスへ案内していた霊柩車運転手のSという男が、そっとNさんへ耳打ちした。

「おれが帰ってくるまで絶対に火をつけるな」

 これが何を意味するのか、このときはよくわからなかったという。