起訴後の有罪率が99.9%を超える日本の刑事司法。この極めて高い水準の裏で、冤罪被害に苦しむ人たちがいる。元厚労省官僚・村木厚子さんの著書『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社)は、自身の壮絶な体験をもとに、冤罪が捏造される恐るべき実態を暴いた一冊だ。

 2009年6月、偽の障害者支援組織「凜の会」が障害者郵便制度を悪用した「郵便不正事件」をめぐり、虚偽公文書作成・同行使の容疑で逮捕された村木さん。2010年9月に無罪判決が下されるまで、苦難の日々を強いられることとなった。

写真はイメージです ©︎GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 村木さんは逮捕から164日間、大阪拘置所の独房に勾留される。無実の身でありながら、厳格な監視下での生活を強いられた末、無罪判決が出てからも“ある後遺症”に悩まされることになった。以下、本書より一部を抜粋して紹介する。(全3回の2回目/つづきを読む

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まるで蒸し風呂のような独居房での生活

 私が勾留されていた大阪拘置所の独居房は、畳二畳にトイレと洗面台がついた部屋でした。畳部分とトイレとの仕切りはなく、房内には監視カメラがついています。自殺を防ぐためなのでしょうが、当初はやはり、たじろぎました。

 逮捕後に拘置所に連れて行かれた時は、まず、着ている服を全部脱いで身体検査をされました(男性の場合は性器まで調べられるそうです)。そのあと、指紋と掌紋を取られ、灰色の上下のトレーナーを着せられて写真を撮られ、タオル、歯ブラシ、食器など最低限のものを渡されて独居房に入ると、薄い布団がたたんで置いてありました。

 拘置所には厳しいルールがたくさんあります。房の中で勝手に寝転んだりすることはできず、決められた時間以外は座っていなければなりません。布団をたたんでおく場所や、机を置く向きなども決められています。寝具や衣類は制限され、職員が房に入って持ち物検査をすることもあります。一度、食事をしながら本を読んでいて職員に𠮟られました。

 入浴は週2回(夏場は3回)で、房から出て浴場まで行きます。服を脱ぎ始めてから入浴して服を着終わるまでの時間は、きっちり15分以内と決まっていました。麦飯中心の3度の食事は、おいしいとまでは言えないものの、しっかり食べるようにしましたが、それ以外に好きなものを自由に食べたり飲んだりすることは、もちろんできません。約5カ月半の勾留期間中に、体重は6kgも減りました。

 房の中にエアコンはなく、夏に勾留された私は、蒸し風呂のような暑さのなかで日々を送りました。「保釈請求の結果に一喜一憂しちゃいけない」と、ずっと自分に言い聞かせていましたが、秋になって、いったん認められた保釈許可決定が取り消されたあとは、このまま冬を迎えたら暖房のない房の中で寒さに耐えられるだろうか、体調を崩してしまわないだろうかと、不安を感じはじめました。そんな矢先、保釈がようやく認められたのです。