体力と気力が驚くほど低下

 勾留期間中、仕事についての心配は多々ありましたが、大きな組織なので、すべて同僚に託すことができました。体調を大きく崩すこともなく、家事や娘たちのことを夫に安心して任せることのできた私は、まだ恵まれているほうだと、拘置所を出た時には思っていました。ところが、その後、そんな私でも身柄拘束が心と身体に大きな影響を及ぼしていたことを、思い知らされることになったのです。

 5カ月半の勾留生活で、私の体力と気力は驚くほど低下しました。

 逮捕前は駅の階段を一気に上がっていたのに、拘置所の中でずっと座っている生活だったため足が弱り、保釈後はそれができない。拘置所内では人と喋る機会が少なかったため、喉も弱っていました。自宅のベランダの鉢植えに水をやらなければ、植え替えもしなければ、と思いながら、どうしてもその気力が湧いてこない。こうした状態から回復するのに、勾留期間とほぼ同じ半年間もかかってしまいました。

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 心の異変に気付いたのは、さらにそのあとです。無罪が確定し、職場復帰をしてから1年ほど過ぎた頃、自分の感情の揺れ幅がとても小さくなっていて、嬉しいことがあってもそれほど喜んでいない、嫌なことがあってもあまり悲しんだり落ち込んだりしていない、ということに気付きました。

自分の感情を押し殺していた

 思い返せば、逮捕後の20日間は連日、昼過ぎから夜の10時頃まで取調べを受けていましたが、その間、拘置所の房で泣くことは、ほとんどありませんでした。それだけ気が張っていたのだろうと思います。

 その後の保釈請求や裁判でも、結果に一喜一憂したら自分が壊れてしまうと思っていたので、「保釈請求が却下されても悲しまない」「無罪判決が出ても、控訴があるかもしれないから喜ばない」と、かなり意識的に決めていました。

 こうして自分の気持ちを押し殺す癖がついてしまったせいで、感情の揺れ幅が狭くなってしまったのだと思います。この状態が2年近くも続きましたが、「生きていくのに不自由はないから、しょうがない」と、自分を納得させるしかありませんでした。