刑事司法に関する問題が相次ぎ、いつ誰が次の犠牲者になるか分からない日本。なんでそうなるのか、どうしたらいいのか、それを具体的かつ分かりやすく書いた本が出た。『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社)だ。
著者は、村木厚子さん。厚生労働省局長時代の2009年、無関係の「郵便不正事件」で大阪地検に逮捕起訴され、無罪判決を勝ち取った後に職場復帰して、同省次官まで勤め上げた。
順調にキャリアを重ねるなかで、突如として身に覚えのない罪を着せられた村木さん。
出口の見えない日々の中、いかにして凄まじいストレスを乗り越えたのか。当時の心境をふり返ってもらった。(全3回の3回目/最初から読む)
聞き手・構成=江川紹子
◆◆◆
どうしたら心穏やかに過ごせるのか?
――あんなに酷い目に遭っているのに、そうやって検察内部の人たちのことまで気遣うのが村木さんなんですよね。なんでそんなに優しいのかって、言われませんか?
村木厚子さん(以下、村木) うちの家族は、絶対にそれには同意しないですよ(笑)。
――でも、なんでそんなに怒らないのか不思議になります。私だったら、無実の罪で拘置所に入れられ、そこでいろんな規則にがんじがらめにされたりしたら、絶対怒りまくると思います。でも、あの時の村木さん、拘置所で怒ってないですよね。
村木 ないですね。
――むしろ好奇心を持って、拘置所の中を観察したり記録したりしている。どうしてそうなるんですか?
村木 その方が精神衛生上いいからですよ。どうやったら自分が心穏やかに過ごせるかを考えたらそうなったんだと思います。
それに、役所にいるといろんな社会課題が持ち込まれるんですね。その当事者は、たいていものすごい怒りを持っている。我々の仕事は、怒りの原因となっている課題をどう解決するかを考え、探すこと。それが癖になっているのかもしれませんね。
子供の頃から「喜怒哀楽」の感情のうち「怒」が一番少なかったように思います。そもそも私は反応が鈍くて、考えるのがゆっくりなんですよ。だから「これは怒っていいことだ」と気づいた時には、その場面は終わっていて、怒りを表明する場がない。そういうことはよくありますね。
――怒ったこと、ないですか?
村木 ないわけじゃないけど、怒って良い結果になったことは、たぶん一度もないような気がします。それもあって、身柄拘束をされている間も、自分の中で損得を考えて、一生懸命自分を守っていたんだと思います、自分なりのやり方で。
――村木さんなりのやり方……。

