「今いちばん暇なのは村木さんです」

村木 今考えても仕方がないことは考えないで、横に置いておく、とか。それで、今できることに集中する。あと、何かあっても一喜一憂しない。こういうことは、仕事と家庭を両立する中で身についた処世術だと思います。おかげで、気持ちの切り替えはすごく早かったですね。今の自分にできることを確認して、その中からやることを選択する、ということなので、ストレスがたまりにくかったような気はします。

 拘置所にいた時、「今しなきゃいけないこと」の一つが裁判準備でした。弁護士さんからも「一番暇なのは村木さんです」と言われて(笑)。積み上げると80cmくらいになる大量の証拠書面をじっくり読みました。

©︎鈴木七絵/文藝春秋

 見落としがあるといけないので、一読した後、少し間をあけて、もう一度読む。仕事柄、文書を読むのは慣れていますし、そういうノウハウは身についていましたから。

ADVERTISEMENT

 家族も偉かったと思います。夫と娘2人で、「できるだけいつも通りの暮らしをしようね」と言い合ってたらしいんですよ。「いつも通り」ってすごく大事で、強いんですよね。次女も、普通に修学旅行にも行っていましたし。

“信じてくれている人がいる”のはすごく大きいこと

――ご家族の存在は、心の支えとして大きかったですか。

村木 やはり絶対信じてくれている人がいる、というのはすごく大きいです。私の場合、職場でも信じてくれる人が多かった。あとは体調管理ですよね。体の具合が悪くなると気持ちも折れちゃいますから。この二つが大事だったと思います。

――絶対的に信じてくれる人がいない場合はどうしたらいいでしょう。

村木 やはり最後は自分と向き合うしかないですよね。自分に、やったのかやってないのかって質問して、自分で答えていく。

 ただ、私はすごく条件に恵まれていました。収入があって家事もできる夫がいて、かつ家族がみな信じてくれて、自分も健康だった。そういう好条件がそろっている人ばかりではないので、みんなも同じようにがんばれとは、とても言えません。