刑事司法に関する問題が相次ぎ、いつ誰が次の犠牲者になるか分からない日本。なんでそうなるのか、どうしたらいいのか、それを具体的かつ分かりやすく書いた本が出た。『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社)だ。
著者は、村木厚子さん。厚生労働省局長時代の2009年、無関係の「郵便不正事件」で大阪地検に逮捕起訴され、無罪判決を勝ち取った後に職場復帰して、同省次官まで勤め上げた。
今国会の大きな焦点である「再審制度の見直し」。検察の権限維持を狙う法務省に対し、自民党内からは批判が噴出し、法案を提出できない異例の事態が続いていた。
かつて村木さんは、冤罪被害の当事者として、2011年に法務大臣の諮問機関として作られた法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」)の委員を務めていた。当時、どんな問題に直面したのか。(全3回の2回目/つづきを読む)
聞き手・構成=江川紹子
◆◆◆
普通に多数決をやったら負けてしまう
――村木さんが委員を務められた特別部会の話をもう少し伺います。あの時、最大の課題は、取り調べの全過程での録音録画を捜査機関に義務づけるかどうか、でした。最初から最後まで録音録画をしていないと、否認していた被疑者がどういう取り調べによって自白に至ったのかも検証できません。でも、警察はそれに激しく抵抗しました。
学者たちもそれに理解を示し、可視化の実現に暗雲がたれこめたところに、村木さんら5人の有識者が「取りまとめに向けての意見」という文書をまとめ、公表しました。これで風向きが変わりました。
対象事件は限られましたが、全過程の録音録画が実現しました。5人が一つの塊になったことで、大きな力になったと思います。みんなをまとめられたのが村木さんで、端で「すごい!」と思いながら見ていました。この5人は、最初からまとまっていたんですか?
村木厚子さん(以下、村木) いえいえ。最初はお互いに何を考えているのかわかりませんでした。ただ、法務省の委員の選定は極めて周到で、自分たちの考え方に理解を示す学者や専門家が多数を占めるように構成されているので、普通に多数決をやったら可視化を目指す側が負けると分かっていました。
私は役所で審議会の運営をやる事務局をたくさんやっていたので、どうやったら審議会が動くかは経験的に知っていたこともあり、どうしたらいいか考えました。

