起訴後の有罪率が99.9%を超える日本の刑事司法。この極めて高い水準の裏で、冤罪被害に苦しむ人たちがいる。元厚労省官僚・村木厚子さんの著書『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社)は、自身の壮絶な体験をもとに、冤罪が捏造される恐るべき実態を暴いた一冊だ。

 2009年6月、偽の障害者支援組織「凜の会」が障害者郵便制度を悪用した「郵便不正事件」をめぐり、虚偽公文書作成・同行使の容疑で逮捕された村木さん。2010年9月に無罪判決が下されるまで、苦難の日々を強いられることとなった。

村木厚子さん ©︎鈴木七絵/文藝春秋

 村木さんを追い詰めた、あまりに苛烈な取調べの実態とは。以下、本書より一部を抜粋して紹介する。(全3回の1回目/つづきを読む

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※文中「Bさん」は、村木さんの部下で、偽の証明書を作成したとして逮捕された厚労省の元係長。検察は、Bさんの行動を村木さんの指示によるものだと推測していた。

※文中「C会長」は、偽の障害者支援組織「凜の会」の代表を務めていた人物。

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必死に説明したにもかかわらず…

 供述調書が私の意図しない読まれ方を裁判官にされるのではないかと心配でたまらず、担当の遠藤裕介検事から調書の下書きを見せられた時には、死にそうな思いで調書の内容を確認しました。付箋と鉛筆をもらい、「こんなことは言ってません」「ここはそういう意味ではありません」と直してほしいところを指摘し、説明しました。噓の内容を入れさせないように、一言一句の確認に神経をすり減らしました。

 ところが、何度も読み返して「これで結構です」と言うと、遠藤検事は、

「最初のニュアンスとだいぶ変わっちゃったんで、ちょっと上に確認してきます」

 と言って調書を私から取り上げ、取調室を出て行ってしまったのです。

 言いようのない虚しさにとらわれました。これだけ必死に説明したのに、私の供述をひとことも聞いていない上司の了解を取りに行くなんて、調書っていったい何なのだろう。

 それでも彼は、取調べ検事としてはまだいいほうだったのか、取調べの時に怒鳴られたり、机を叩かれたりしたことはありません。ただ、一度だけ心の底から腹が立って抗議したことがあります。それは、彼が私の「罪」について、平然とこう言い放った時です。