起訴後の有罪率が99.9%を超える日本の刑事司法。この極めて高い水準の裏で、冤罪被害に苦しむ人たちがいる。元厚労省官僚・村木厚子さんの著書『おどろきの刑事司法 “犯罪者”の作り方』(講談社)は、自身の壮絶な体験をもとに、冤罪が捏造される恐るべき実態を暴いた一冊だ。

 2009年6月、偽の障害者支援組織「凜の会」が障害者郵便制度を悪用した「郵便不正事件」をめぐり、虚偽公文書作成・同行使の容疑で逮捕された村木さん。2010年9月に無罪判決が下されるまで、苦難の日々を強いられることとなった。

©︎Nobuyuki_Yoshikawa/イメージマート

 有罪判決を下された冤罪被害者をさらに苦しめるのが、再審開始までのあまりに長い道のりだ。人生の大半を奪われる被害者も少なくなく、刑事訴訟法改正をめぐる議論でも最大の論点になっている。なぜ、救済までにこれほどの時間を要するのか。本書より一部を抜粋して紹介する。(全3回の3回目/最初から読む

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再審が始まる前にも審理がある

 再審制度は二段階の構造になっています。

 第一段階は、裁判をやり直すかどうかを判断するための審理で、「再審請求審」といいます。請求人の無罪を示す新たな証拠があるかどうかが審理されますが、この審理は、通常の裁判とは異なって一般の人には公開されず、基本的に裁判官、検察官、弁護士の話し合いで進められます。冤罪被害者の人生を左右する審理が非公開なのは、いかがなものでしょう。通常の裁判と同様、再審請求審も公開すべきだと思います。

 第二段階は、やり直しの裁判そのもので、「再審」といいます。再審請求審で裁判のやり直しが認められると、「再審」が開かれます。ただ、再審請求審の手続について法律で詳しいルールが定められていないため、再審が始まるまでには、とてつもなく長い時間がかかってしまいます。

袴田さんは再審開始まで42年かかった

 袴田巌(はかまたいわお)さんの場合、最初に再審請求をしてから実際に再審が始まるまでに、実に42年もかかっています。その間に、巌さんが意思疎通の難しい精神状態になってしまったことは、すでに述べたとおりです。後述する福井女子中学生殺人事件で有罪が確定して服役した前川彰司(まえかわしょうし)さんは、再審開始決定が出るまでに20年あまりかかりました。

 そのうえ、再審開始決定は、「裁判をやり直すことが決まった」というだけです。さらにそこからやり直しの裁判が続き、無実を訴えている人は人生をどんどん奪われていきます。冤罪被害者の救済という再審の役割を考えると、こうした事態は「異常」と言うほかありません。